青天の霹靂



 場末のマジックバーで働く売れないマジシャン春夫(大泉洋)は、生まれ育った環境を恨みながら人生を諦めていた。ある日、警察から行方不明だった父が亡くなったと連絡がくる。父はホームレスとなり孤独の中で死んでいた。春夫は、父が住んでいた鉄橋の下の小屋で、幼い自分と父が写った写真を見つけ手に取ると、突然の晴天の中、雷が直撃し、気が付くとそこは40年前の世界であった。

 タイムリープもので、40年前に飛ばされた男が、おのれの恨んでいた出生の真実を知り人生を見つめ直すものがたりです。

 雷に打たれた春夫が目を覚ますと、鉄橋の土台がコンクリートからレンガに変わり、町行く車は古いデザイン。路地に入ると洗濯のタライが家屋の壁に掛けられ、雨傘が開いたままで塀に引っ掛けて干してある。慌てて路地を駆け抜けると、そこはバスが停留するロータリーで、賑わう個人商店に、赤いポスト、コカコーラの瓶の自動販売機、そして多くの騒がしく移動する人々。少しこじんまりとはしていますが、昭和40年代らしき風景が映し出されています。やっぱりタイムリープものは、飛ばされた先の第一印象が大事ですね。そして飛ばされ途方に暮れる春夫が、自分を落ち着かせようと飲むのが三角牛乳。もちろん買うときには最初に500円玉を出す時代ボケも忘れていません。そして偶然か必然か辿り着いたのが浅草雷門ホール。そこで売れないマジシャンでも、ひょいとスプーン1本をくにゃり、ぐるり、ポロリと披露すれば、ユリゲラー来日前ですから大センセーショナルです。でも浅草は芸だけでは成り立たず、お笑いが必要なため、春夫のキャラ設定は謎のインド人「ペペ」。出で立ちはターバンらしき帽子に上半身裸にベストと、どこかで見たことがあるような・・。そして助手は中国人設定ですからチャイナドレス。カタコト日本語流暢に操り(?)繰り広げられるスプーン曲げの妙技にお客は拍手喝采です。この最初の助手がまさかの母親で、次の助手謎の中国人「チン」がまさかの父親。そう絡ませますか。でもでも、芸達者な「ペペ」大泉洋さんと「チン」劇団ひとりさんのコンビですから。漫才マジックが本当に面白いです。ネタはそれほど多く披露してくれませんが、息の合ったトークと息のあったケンカは絶妙ですね。そして「チン」の恋人悦子=春夫の母親は、柴咲コウさん。ものがたりを暗示させるかのような薄幸そうな雰囲気を持ちつつも、子供を授かって幸せいっぱいな女性を演じています。桜の中でふくらんだお腹をさする姿などまさに母。春夫が感慨深く見つめ、自分の人生だけでなく両親の人生も変えてみようと決意するのは当然の流れです。そして、春夫が今まで会ったことのなかった母親とふれあい、聞かされていた母親像が崩れてゆき荒んだ心に変化をもたらせますが、春夫が知っている両親の姿とは異なる展開へと進みます。そして、春夫が未来を予知できると信じて、私はどんな母親なんだろう?と尋ね、今までの人生の辛い思いと、ひとときを過ごした思いが交差して、春夫から出た言葉が「生きる理由」。
 話し的にはベタなのですが、昭和40年代という背景をうまく使い、劇団ひとり監督が描く人物像が俳優さんたちの素晴らしい演技で活かされ良い作品となっています。

【予告編】

2014年作品。
・出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり、風間杜夫
・監督:劇団ひとり
・音楽:佐藤直紀
・主題歌:「放たれる」Me.Children

<浅草雷門ホール>
舞台の浅草雷門ホールは信州上田の上田演劇に作られたそうです。



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