ガス人間第一号



 人里から離れた暗闇の曲がりくねった道を、僅かなヘッドライトで疾走する車とあとを追うパトカー。やがて車はカーブを曲がりきれず横転しながら崖下に転落するが、運転していた銀行強盗殺人犯の姿は消えていた。そして付近を捜索していた警察官たちは、テンポよく鳴る小鼓の音と般若の面をつけて華麗に踊る日本舞踏家藤千代の屋敷にたどり着くが、犯人の痕跡を見つけることはできなかった。そして再び同じ手口で銀行強盗が連続し、奪われた現金が藤千代の家から発見されたことで藤千代は警察に連行される。しかし銀行強盗犯と名乗る人物が警察に出頭して銀行強盗を実演すると言い出す。そしてその人物が多くの警察官や銀行員の目の前で見せた強盗の手口とは誰もが想像し得ないもので、あっさりその場から姿を消してしまった。
映画はタイトルの「ガス人間」の名の通り体をガス化できる人間の話ですが、半世紀の前以上の映画でありながら、ガス化の描写が秀逸。男が胸に手をやり、ぼわっと顔が青白く光ったと思ったら、徐々にスーツがしぼみ、足元から煙が噴き出して漂う。やがてスーツは床に崩れ落ちて、その中身は消えてしまう。今ならCGで簡単に映像化できるこのシーンを作り上げるアイデアとその技術力に、改めて円谷英二特技監督の凄さを感じます。ガス化のシーンの中には、ガス人間が留置所の入り口の鉄格子の前に立ち止まり、半ガス化してスーツ姿の厚みを変えて格子の隙間をすり抜けるシーンもあり、まるで「ターミネータ2」に登場する液体ターミネータT1000型の格子通り抜けシーンを彷彿させるものもあり演出も先んじています。このような特撮シーンと無骨な「ガス人間第一号」というタイトルのため、特撮ゲテモノ映画と思われてしまいますが、銀行強盗犯と警察のサスペンスという一面と、ある実験によってガス人間にされてしまった男の悲壮と、その救いにもなる男女愛と哀しい運命というテーマも含まれて、普通の映画としても十分体をなしています。日本舞踊のカットを多用しているのも、このような思惑があってのことなのでしょうか。そしてガス人間の恋人であり、日本舞踊の華麗な舞を見せてくれる女性に八千草薫さん。今なお綺麗な八千草さんの若かりし頃は、・・おーっと声が出るほど、本当に綺麗で可愛くて、気丈でいながら気品がある。この容姿と雰囲気なら映画の中の刑事が見惚れてしまうのは致しかたないですね。
 また昔の映画の楽しみ方として、当時の日本の風情が垣間見れること。車の情景ひとつをとってもボンネットトラックや三輪トラックが登場したり、乗用車は屋根部分が白く、ボディーは水色やワイン色のツートンでスタイルもおしゃれな感じ。その車が走る道路の信号は、白黒の斜線のライト式で、信号が変わる度にビリリと音がなり信号があるのにもかかわらず交通整理の警官がいる、なんていうシーンを総天然色の色彩鮮やかな懐古ちっく映像で見るのもなかなかいいです。
 映画はラストまで予断なく続き、理不尽な人生を悲観しながらも藤千代に救いと癒しを求めてたガス人間とそれを受け入れてある決断をする藤千代の愛の結末も映画を安物にしていませんでした。

【予告編】

1960年作品。91分。
・出演:三橋達也、八千草薫、佐多契子、土屋嘉男、左卜全、田島義文
・監督:本多猪四郎
・特技監督:円谷英二
・音楽:宮内 國郎

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<東宝変身人間シリーズ>
ガス人間以外に「美女と液体人間」('59)、「電送人間」('60)、などか同じ東宝で作られています。どの作品も円谷英二特技監督の神業で、人間とは別の存在を創造しています。これらの映画以外にも「マタンゴ」('63)や「透明人間」('54)も彼ら変身人間に近い作品で、どこからしら哀しい雰囲気があります。

   
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コメント

半世紀以上前にして完成の域

こんばんわです。
これ、名作ですよねえ。いわゆる変身人間3部作の中で
液体人間と双璧をなす出来かと思います。電送はちょっと
ハズしたかなって感じがしましたが…。
サスペンスとロマンスのバランス、気化時のアイデア、
それを支える円谷さんの技、等々どこをとっても秀逸
ですね。今で十分通じるのではないかと感じます。
的確にして面白いレビューをありがとうございました。

Re: 半世紀以上前にして完成の域

液体人間もいいですね。
この頃の特撮映画はストーリーも映像の出来栄えも素晴らしく、そこからだんだんに子供騙しになってしまったジャパニーズ特撮。やっぱり、ものがたりがしっかりしていないとダメなんですよね。

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