キツツキと雨



 山あいの村にゾンビ映画のロケ隊がやってくる。そして林業の中年男(役所広司)と気弱な新米監督(小栗旬)との交流がお互いを成長させてゆく。

 山に囲まれた村で林業を生業とし妻を亡くして空虚の中、惰性で生活する中年男。念願の映画監督になったものの、自分に自信が持てず悩む青年。この二人が映画のロケを通じて知り合い深く関わってことで、それぞれの口には言い表せない心のもやもやが薄らいでゆくコメディを交えたヒューマンドラマです。役所広司さん演じる中年男は、妻を亡くした以外にも悩みを抱え「だた生きている」が当てはまるような寂しく静かな様相。もちろん林業(昔で言うキコリ)ですから、静けさのなかにも、その仕事ぶりは男らしく力強いきびきびとした姿を見せてくれます。木の伐採シーンはドキュメンタリータッチなのでよくそれが伝わってきます。そこに突然現れる映画ロケ関係者。その人物の言葉に対する、「はっ?」、「はっ?」、「はっ?」と繰り返す問答のその表情や間は、役所さんのコメディスイッチがカチッと入った映画のワクワク感を予感させます。一方、新米監督はいつもパーカーの前ポケットに手を突っ込み、うつむき加減で小さい声。隙あれば現場から逃げてしまいたいと考えている小心者の青年。いつも颯爽としている小栗旬さんとはギャップがあり、こちらもこの後が見てみたい予感。このいかにも接点が無く正反対の二人ですから、風呂場でばったり顔を合わせても片方が少しずつ逃げてゆく関係。で、あったのが、監督が現場から逃亡する時に、中年男に「この映画つまらないでしょ」とポツリとその脚本の流れを話し出すと、不思議と反応して「その後は?」とまんざらでもなくしつこく聞かせろと促す。このちょっとしたやりとりが、お互いのモヤモヤに微風が流れたかのように少し薄らぐきっかけとなり、新米監督は大物役者にも対等に演技要求を、中年男は映画にどんどんのめり込みロケの手伝いを進んで行うまでに、そして若者の心情を少しずつ理解しだして、抱えていたもう一つの悩みの解決にも繋がる変化を見せるシーンはグッとくるものがあります。このよくできたヒューマンドラマの間に、映画のロケシーン、これがゾンビ映画で、ところどころに笑いを交えたシーンをインサートすることで、映画に脈動を与え生きた映画にする要素となっています。そして、ラストの楽しかった夏休みを思い出すかのように仕事の合間に森で遠くを見つめる中年男。そしてその夏休みが継続して精一杯楽しもうとする青年の対照的な姿の中にも、お互いが「今を生きる」を見つけた姿がとても印象的な作品でした。

2012年作品。129分。
・出演:役所広司、小栗旬、高良健吾、臼田あさ美、古館寛治、山崎努、伊武雅刀、平田満、嶋田久作、高橋努
・監督:沖田修一
・音楽:佐藤崇
・主題歌:「フィルム」星野源

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<三人の監督>
この映画には三人の監督がいます。もちろん一人はこの作品の沖田監督で、他の映画は南極観測隊員たちの生活をコメディタッチで描いた「南極料理人」(‘09:堺雅人)。あとの二人はこの映画の主人公の役所広司さんと小栗旬さんで、役所監督は親子愛を描いた「ガマの油」(‘08:役所広司)、小栗監督はコメディサスペンス(?)「シュアリー・サムデイ」(‘10:小出恵介)と、三人の映画を見比べてみるもの面白いです。

  



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コメント

沖田修一監督といえば、これも「南極料理人」もおもしろいですが、
「横道世之介」サイコーですよね!

この映画好きです。

この映画いいですよねー。
ご飯を食べるシーンが印象的でした。
味つけ海苔とか(笑)

南極料理人

この映画大好きです(*^_^*)「僕は、ラーメンで出来ているんだ」という、きたろうさん(笑)とハイテンションな豊原さんがツボでした。

Re: タイトルなし

つかりこさん。コメントありがとうございます。
実はまだ観てないです「横道世之介」。
いつもレンタルの棚で、うーん、と悩んでました。
やっぱり沖田監督作品だから面白いのですね。観ます。

Re: 南極料理人

マダラ狼さん。コメントありがとうございます。

食べ物で、あそこまで楽しませてくれる映画はないですよね。
生瀬さん、きたろうさん、豊原さんらのキャラもいいー感じで好きな映画です。

Re: この映画好きです。

ニルコビチさん。コメントありがとうございます。

あーっ、それを書くの忘れてました。
何でも味付け海苔で包んで食べる親子の姿、いい感じでしたね。

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