鍵泥棒のメソッド



 売れない役者桜井(堺雅人)は、殺し屋コンドウ(香川照之)が銭湯で転んで気を失ったところに偶然居合わせ、ロッカーの鍵をすり替えてしまう。頭を打ったコンドウはすっかり記憶を失くし、自分を桜井だと思い込み記憶を戻そうと馴染みのない生活を始める。一方、桜井はコンドウの豪勢な生活に驚きながらも、おそるおそるその生活を楽しみ始める。そして、その2人の馴れない生活に、結婚日を決めて相手を探す真面目な女性編集長香苗(広末涼子)とコンドウへ殺人依頼をした暴力団工藤(荒川良々)が絡み、ある騒動へと発展してゆく。

 とある出版社。就業間際に真面目顔で突然結婚宣言する女性編集長。でも相手は決まっておらず日程だけが決まっている。
 とある高級住宅地。高級車の車内でベートベンを聴きながら、手袋と安物の透明なカッパを身につけるスーツ姿の男。やがて、車を停めた前の家から出てきた男性に近づき腹部を何度も殴るような仕草、やがて殴られた男は崩れ落ち、スーツ姿の男が車のトランクに男性を投げ込む。手には血にまみれたナイフが握られ、何事も無かったように素早くゴミ袋に放り込み車を走らせる。
 とあるボロアパート。どさっとした音と背中を押さえる男。首には細いロープが絡まり苦しそうな顔。男は財布の中の僅かばかりのお金を数え、そこに風呂屋の無料チケットを見つける。

 まだ別々の世界を生きる興味深い三人の、これから巻き込まれる騒動を期待させるプロローグから始まります。この別世界の三人の接点は、銭湯と病院。銭湯では、自殺未遂で汗をかいたから来た冴えない桜井と殺しで袖口に血が付着したから来たコンドウが対照的に並ぶ。片や生気がない男、片や自信に満ち溢れた男。この2人がある事故でその人生が入れ替わったことで見せるギャップが楽しいです。いままで殺し屋の貫禄と自信満々のコンドウが記憶を失くして、自分の哀れなる人生とその日暮らしの生活に愕然としながらも、真面目に前向きに生きようとする姿。そこに入院した病院でたまたま知り合った香苗との、恋?の行方は。片やダメダメ人生を送っていた桜井は、相変わらず流され人生の延長ですが、あるトラブルに巻き込まれることで、ふと人のためになろうかなんて思って行動に出てみたり。香苗もいままで臆病で領域外であった恋と結婚に挑戦しようとしてみたり。と別の人生に入り込む姿がコミカルにそして真剣に描かれています。

 この三人を演じる役者さんがはまり役です。売れない役者のダメ男桜井に堺雅人さん。なかなかのダメダメぶり演技で、いつもビクビク、トラブルに巻き込まれてアタフタとする姿や、ちょっとだけ格好つけようかなの姿の後のやっぱりダメダメな感じがいい。そして完璧主義の殺し屋コンドウに香川照之さん。殺し屋姿と仮桜井姿ともうひとつの隠された姿の使い分けが凄く、まったくの別人。だから記憶を取り戻すシーンでの別人に徐々に移り変わる表情はコワイくらい。同じく完璧主義で結婚相手より先に結婚の日取りを決めて行動に移す女性編集長に広末涼子さん。無表情で淡々と話し、迷いも無く物事を進めてゆく超真面目な人物感がいいです。この真面目な演技があるからこそ、ラストの胸キュンシーンが効果的。

 このキャストに絶品の脚本ですから面白くないわけがない。脚本はもちろん、内田けんじ監督で、同じく脚本・監督作品の「アフター・スクール」、「運命じゃない人」も面白かった。

【予告編】

2012年作品。128分。
・出演:堺雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々、森口瑤子
・監督:内田けんじ
・音楽:田中ゆうすけ
・主題歌:「点描のしくみ」 吉井和哉

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清洲会議



 天正十年、本能寺で宿泊する信長を家臣の明智光秀が急襲して自害させる。柱を失くした織田家宿老たちは、清洲城に織田家後継者選ぶために集まるが、三男信孝を推挙する柴田勝家と丹羽長秀、次男信雄を推挙する羽柴秀吉の主導権争いが周りを巻き込み過熱する。

 清洲会議といえば本能寺の変後の戦国時代の大転換期のイベント。なかなかこのイベントは表舞台に出てこないけれど、このインドアの戦いが楽しい。ほとんど清洲城の中で繰り広げられる攻防戦で、中庭を挟み秀吉派と勝家派が、ちらりちらりと相手の様子を伺いながら、一手一手を打ってくる。そしてキーマンとなる人物の部屋にこっそりと訪問して自分の味方に付けようとあの手この手を繰り出す。この絶妙な駆け引きが、合戦のない戦国物語でありながら、ぐいぐい引き込まれ、まったく中だるみがない。
 また、キャストが豪華で個性的で、歴史上の人物達と俳優さんたちが見事に融合し過ぎです。お調子者だがしたたかに天下を狙う「羽柴秀吉」に大泉洋さん。ノリノリの明るさの中に憎めない腹黒さが見え隠れ。秀吉を嫌い織田家第一を考える無骨者の筆頭宿老「柴田勝家」に役所広司さん。猪突猛進の堅物だけど、お市様の前ではデレデレしてしまい、大局よりお市様のほうを優先してしまう。勝家の同僚で勝家の頭脳「丹羽長秀」に小日向文世さん。冷静沈着、反秀吉派のはずが・・。信長の乳兄弟「池田恒興」に佐藤浩一さん。両派の誘惑にフラフラ、ニヤニヤする八方美人ぶりが見事。その他にも、秀吉を嫌がることなら手段を選ばない信長の妹「お市」に鈴木京香さん。秀吉に担がれる信長次男のバカ殿「織田信雄」に妻夫木聡さん。海岸の走り合戦での小気味よい疾走はお見事。ちょい役でも、秀吉の命を狙うくノ一に天海祐希さん、本能寺の変で信長に謀反を伝える森蘭丸に染谷将太さん、そして「ステキな金縛り」の落武者幽霊の更科六兵衛が生前のまま登場するとは。そして以外と合っているのは「織田信長」の篠井英介さん。他の映画では勇ましい役者さんが演じますが、ピリピリ感ではなく飄々感の信長像が新鮮です。この多くの登場人物ひとりひとりを丁寧に描いているからこそ、常にメインキャストが登場しているかのようで飽きが来ないのですね。
 そして他の映画やテレビの戦国時代の人々とどこか違うビジュアル。武将たちは月代が広く横の髪をギュッとして髷が小さい。そのため、これ誰?と思う人が多いです。普段ふさふさイメージの信雄役の妻夫木聡さんや、信長の弟信包役の伊勢谷友介がそう。デカ耳の独特威容の羽柴秀吉の大泉洋さんや、地毛?と思う柴田勝家役の役所広司さんは、わかりやすいですが、さらにまったく違和感がないのが丹羽長秀役の小日向文世さん。何故だろう・・。そして高貴な女性陣はというと、お市様や信長の長男信忠の妻松姫の鉄漿(おはぐろ)と眉無し姿にギョッしてしまいます。秀吉の妻お寧は眉ふさふさですがね。やはりこんな所にもひとりひとりのキャラクタ作りが得意な三谷監督らしさが出ています。

【予告編】

2013年作品。138分。
・出演:大泉洋、役所浩司、小日向文世、佐藤浩一、鈴木京香、妻夫木聡、伊勢谷友介、中谷美紀
・監督:三谷幸喜
・音楽:荻野清子
・原作:「清洲会議」三谷幸喜



<現代の清洲城>
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