角川映画 1976-1986 日本を変えた10年 中川右介著



70年代に突然「犬神家の一族」のテレビコマーシャルから始まり、その映画と本と音楽の融合と大宣伝で一世を風靡した角和映画の創立~栄光~翳りまでを記した作品です。中心人物はもちろん、若くして角川書店の社長になり角川映画(角川春樹事務所)の創始者角川春樹氏。そして角川映画に関わった映画監督、原作者、俳優さんたちの当時の様子が描かれて、映画好きには堪らない内容です。特に最初から大林宣彦監督の有名になる前のエピソードが結構挿入されていて、これも興味を引くものです。
角川映画は、イメージ的には世間の話題をさらい、よく売れた映画たちのような気がしますが、実際には意外と興行収入が高くない作品もあり、映画評論家たちには徹底的に酷評されたみたいです。でも当時、角川映画といえば観たい!と思っていた一般観衆からしたら、鮮明に記憶に残る映画たちであったことも確かです。

紹介されている映画は、

「犬神家の一族」(1976年:市川崑監督、石坂浩二主演、横溝正史原作)
1960年代には忘れられていた巨匠横溝正史氏の探偵小説を掘り起こし、映画実績のない石坂浩二さん、往年のスター高峰美枝子さん、ヒット作がない市川崑監督、流行でなかった最後に関係者を集めて「犯人は○○」と解き明かす探偵スタイル、でヒット要素がないといわれていた映画をテレビコマーシャルで一躍有名にさせ文庫本と合わせてヒットさせた手腕。ちなみに、カラー刷りカバーを付けたのは角川文庫からだそうです。


「人間の証明」(1977年:佐藤純彌監督、松田優作主演、森村誠一原作)
本格的ニューヨークロケ。B級映画にふさわしいエネルギーを持っていると起用された松田優作。ハリウッド脇役スターのジョージ・ケネディ(最初のオファーはロイ・シャイダー、テリー・サバラス)。映画主題歌のジョー山中の「人間の証明のテーマ」(逮捕されてテレビに出演できなかったのでレコードが大ヒット)。そして「かあさん、ぼくのあの帽子、どうしたでしょうね」の流行語フレーズで大ヒットした作品。


あとは、懐かしさいっぱいで説明を書きたいですけど、タイトルだけで・・

「野性の証明」(1976年:佐藤純彌監督、高倉健主演、森村誠一原作)
「戦国自衛隊」(1979年:斉藤光政監督、千葉真一主演、半村良原作)
「悪魔が来たりて笛を吹く」(1979年:斉藤光正監督、西田敏行主演、横溝正史原作)
「白昼の死角」(1979年:村上透監督、夏八木勲主演、高木彬光原作)
「蘇る金狼」(1979年:村上透監督、松田優作主演、大藪春彦原作)
「金田一耕助の冒険」(1979年:大林宣彦監督、古谷一行主演、横溝正史原作)
「復活の日」(1980年:深作欣ニ監督、草刈正雄主演、小松左京原作)
「野獣死すべし」(1980年:村上透監督、松田優作主演、大藪春彦原作)
「刑事珍道中」(1980年:斉藤光正監督、中村雅俊主演)
「スローなブギにしてくれ」(1981年:藤田敏八監督、浅野温子主演、片岡義男原作)
「魔界転生」(1981年:深作欣ニ監督、千葉真一主演、山田風太郎原作)
「ねらわれた学園」(1981年:大林宣彦監督、薬師丸ひろ子主演、眉村卓原作)
「悪霊島」(1981年:篠田正浩監督、鹿賀丈史主演、横溝正史原作)
「蔵の中」(1981年:高林陽一監督、松原留美子主演、横溝正史原作)
「セーラ服と機関銃」(1981年:相米慎二監督、薬師丸ひろ子主演、赤川次郎原作)
「化石の荒野」(1982年:長谷部安春監督、渡瀬恒彦主演、西村寿行原作)
「この子の七つのお祝いに」(1982年:増村保造監督、岩下志麻主演、斉藤澪原作)
「蒲田行進曲」(1982年:深作欣ニ監督、風間杜夫主演、つかこうへい原作)
「汚れた英雄」(1982年:門川春樹監督、草刈正雄主演、大藪春彦原作)
伊賀忍法帖」(1982年:斉藤光政監督、真田広之主演、山田風太郎原作)
「幻魔大戦」(1983年:りんたろう監督、平井和正原作)
「探偵物語」(1983年:根岸吉太郎監督、薬師丸ひろ子主演、赤川次郎原作)
時をかける少女」(1983年:大林宣彦監督、原田知世主演、筒井康隆原作)
「里見八犬伝」(1983年:深作欣ニ監督、薬師丸ひろ子主演、鎌田敏夫原作)
「少年ケニヤ」(1984年:大林宣彦監督、山川惣治原作)
「晴れ、ときどき殺人」(1984年:井筒和幸監督、渡辺典子主演、赤川次郎原作)
「湯殿山麓呪い村」(1984年:池田敏晴監督、永島敏行主演、山村正夫原作)
「メイン・テーマ」(1984年:森田芳光監督、薬師丸ひろ子主演、片岡義男原作)
「愛情物語」(1984年:角川春樹監督、原田知世主演、赤川次郎原作)
「いつか誰かが殺される」(1984年:崔洋一監督、渡辺典子主演、赤川次郎原作)
「麻雀放浪記」(1984年:和田誠監督、真田広之主演、阿佐田哲也原作)
「天国にいちばん近い島」(1984年:大林宣彦監督、原田知世主演、森村圭原作)
「Wの悲劇」(1984年:澤井信一郎監督、薬師丸ひろ子主演、夏木静子原作)
「友よ、静かに瞑れ」(1985年:崔洋一監督、藤竜也主演、北方謙三原作)
「結婚案内ミステリー」(1985年:松永好訓監督、渡辺典子主演、赤川次郎原作)
「二代目はクリスチャン」(1985年:井筒和幸監督、志保美悦子主演、つかこうへい原作)
「早春物語」(1985年:澤井信一郎監督、原田知世主演、赤川次郎原作)
「キャバレー」(1986年:角川春樹監督、野村宏伸主演、栗本薫原作)
「彼のオートバイ、彼女の島」(1986年:大林宣彦監督、原田貴和子主演、片岡義男原作)


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貞子3D2



 幼稚園に通う凪(なぎさ)は、黒い髪が印象的な子供で、いつもクレヨンで黒く塗り潰した上を削るように不気味な絵を描いていた。その凪の周りでは不可解な出来事が多発して、それは凪が描いた絵と酷似しており、それらのすべてのきっかけは呪い動画であった。

 貞子3Dシリーズの2作目で、前作でその特殊能力を貞子に見い出され体を狙われた鮎川茜(石原さとみ)とその恋人安藤孝則(瀬戸康史)の子供が、普通の子供とはどこが違う凪。そして忙しい兄の替わりに凪の面倒をみるのが、妹の楓子(瀧本美織)。楓子が姪の凪の周りで起きる不可解な出来事と凪の関係に怯え悩み、再び呪いの動画が、どこからともなく復活して見知らぬ人々を不幸に落としいれるものがたりです。
 正直シナリオと演出が酷い。一瞬目をそらした隙に、そこに見知らぬものがドーンと現れる手法が多用されていて、ただのお化け屋敷映画に陥っています。薄気味悪い凪という新しい存在がどのように貞子と関係して、この世界にどのように影響するのか、そして楓子や安藤が一作目にように立ち向かえるのか、というメイン路線はあるのでしょうが、どうもストーリー性が乏しい。一応、すっかり人が変わったかのような安藤の怪しい行動や、前作で呪いの動画の発散元で死んだはずの柏田清司(山本裕典)など、謎として描かれていますが・・。この他にも、楓子が通う大学の心理学教授や、前作で呪いの動画を追って、今は体が不自由になってしまった小磯刑事(玉屋涼成)に変わり、新たに呪いの動画を捜査する存在感の薄い刑事などの新しいキャラクターも登場しますが、伏線としては弱い。さらにお化け屋敷映画だったのに途中から無理やり家族愛に方向転換させてしまう陳腐な展開。原作無きジャパニーズホラーはこんなものですかね。
そしてやっぱり、あの「リング」の貞子がバケモノになり、オマージュもリスペクトもない存在になったことが残念でありません。そろそろ解放してあげてもいいのに~。まだ続くのかな~。



【公式サイト】

2013年作品。96分。
・出演:瀧本美織、瀬戸康史、平澤宏々路、大沢逸美、山本裕典、石原さとみ、田山涼成
・監督:英勉
・音楽:川井憲次
・主題歌:「SCREAM」東方神起





<貞子>
1998年「リング」で衝撃的にデビュー?した貞子。あの映画以来、白いワンピースに長い前髪を垂らした女性のイメージが、怨念の塊のようにインプットされました。最近の貞子の扱いは嘆かわしいですが・・。
登場作品は「リング」('98)、「らせん」('98:佐伯日菜子)、「リング2」('99)、「リング0 バースデイ」('00:仲間由起恵)、「貞子3D」('12:橋本愛)の他に、テレビドラマ、アメリカ映画、韓国映画など数多くの作品があります。

    

バイロケーション



 ベランダ越しの山をモチーフに、片手にタバコを持ち苛立ちながら黒基調の絵を描く女性忍(水沢あさみ)。突然のチャイムの音に驚き、ドアを開けると、階下に引っ越してきた青年高村勝(浅利陽介)の姿があり、やがて二人は結婚して勝の部屋の住むことになる。そんなある日、スーパーで買い物をしてレジでお金を払おうとすると、店員に腕を掴まれ事務所に連れていかれる。そして10分前に現れた忍らしき人物が支払ったお札の番号と今支払ったお札の番号が同じと指摘され偽札犯に疑われ、店員が証拠と見せる10分前の監視カメラ映像には、買い物をする自分が映し出されていた。

 バイロケーション(同一の人間が同時に複数の場所で目撃される現象)。このものがたりは、このバイロケ(バイロケーションの略称らしい)が頻繁に現れ、ただ目撃されるだけでなく、本物やその周辺に危害を加え、本物が苦悩する姿を描きます。そしてバイロケは、もちろんまったく本物と姿かたちと声が同じ。しかし、その異様な眼球の動きや、感情を抑制できない行動が、異なるモノであることを印象づけます。そして、このバイロケ被害に悩む人物はひとりだけでなく、被害者たちの会が開かれるほど日常的にあるという設定で、会員は、新加入の主人公忍(水沢あさみ)、刑事の加納(遠藤憲一)、大学生の御手洗(千賀健永)、主婦の真由美(酒井若菜)、高校生の加賀美(高田翔)、そして主催者の飯塚(豊原功補)たちで構成される。このひとりの遠藤憲一さん演じる刑事がいい。少しどこか精神的にやられている感じのギロットと目を見開いた表情、そして少々乱暴な行動に物言いで、ひときわ被害者として人生を狂わされた男のバイロケに対する憎しみが全身から放射されています。さらに、この刑事のバイロケはもっと凶暴ですから、狂気を身にまとい躊躇なく感情だけで行動して怖い。この怖いバイロケたちが、離れたところでの目撃から、徐々に被害者達の前に平気で現れて直接的に襲ってきてエスカレートしてゆく様と、その襲ってくる理由の真実が明らかになってゆく様は、よくできています。そしてバイロケとの攻防以外に、会員なのにバイロケが出現しこない高校生の加賀美と主催者の飯塚の隠された謎も、ものがたりを単純化させないミステリーになっています。

この映画のキャッチコピーは、“「シックスセンス」を超える結末”
最初から知っていたら、なんとなく内容が想像できてしまうキャッチコピーですが、幸運にも映画を見終わってから知ったので、「シックスセンス」という先入意識がなく単純に見れました。たぶん、知っていたら、所々に隠されているヒントや伏線である程度、展開が分かっていたかもしれません。

だからこそ、見終わった後に、その真実を注意して、もう一度見ました。

なるほどね、そうゆうことか。

【オフィシャルサイト】 【予告編】

2014年作品。119分。
・出演:水川あさみ、遠藤憲一、浅利陽介、千賀健永、高田翔、酒井若菜、豊原功補、マイコ
・監督:安里麻里
・原作:「バイロケーション」法条遥

モテキ



 冴えない31歳男藤本幸世(森山未來)は、サブカルのニュースサイト「ナタリー」の面接に来ていたが、社長墨田(リリー・フランキー)の痴情のもつれに巻き込まれ刺されてしまう。が、それがきっかけか採用されライターの仕事をすることになるものの、新米の幸世は失敗ばかりで、そんなやるせない気持ちをツイートしていると、ゴツイ男性アイコンの人物と意気投合して飲みにいくことになる。しかし、待ち合わせ場所に現れたのは、美人でスタイルが良く愛想がいい、みゆき(長澤まさみ)であった。彼女に彼氏がいることを知りつつも、その日からすっかり、みゆきのことが頭から離れなくなる。

 いや~楽しい~。森山未來さん演じる幸世のヘタレぶりが素晴らしい。咆える、もだえる、走る、悶々悶々と男の苦悩が爆発。目の前にいる女性との会話より、脳内つぶやきが多く放出され、女性との駆け引きよりは流れに任せた本能で警戒・観察・突撃が決まる。この幸世を翻弄するのは長澤まさみさん演じる雑誌編集者みゆき(26歳)。彼氏がいるのに平気で他の男と飲んだり、遊んだり、泊まったり。いつも、にこにこしていて明るくボディータッチも露出も多い。普通の男なら瞬殺です。この映画からすっかりイメージが変わったよな長澤さんは。もうひとりの女性は麻生久美子さん演じる重い女、るみ子(33歳)。仕事はミニカーのデザイナーで、普通の車からパトカーへ、ガチャガチャ・・変身とやって周りから引かれ、ひとりカラオケでB’zメドレーを熱唱。幸世のことが好きになり、その重さに気付かれ、だーっとゾンビのごとく向かって来る姿は確かにコワイ。でも麻生さんなら許せちゃうよな、普通。印象的なのは、ある出来事で吹っ切れ、朝日が入る牛丼屋で牛丼をかきこみ口元にご飯粒を付け、思わずおかわりして回りから拍手されるシーン。麻生さんのノリノリ演技好きですね。他にも仲里依沙さん演じる飲み屋のホステス愛(25歳)。グチを聞いてもらい朝目覚めるとベットの横にいるおきまりのシーン。タイトル「モテキ」通り、この3人の女性の方から、自然にキスをされるのですから、確かに「モテキ」。そして、この「モテキ」から対象外の真木ようこさん演じる会社の先輩素子(33歳)。罵声を浴びせ、殴る蹴るはあたりまえの強い女性。この強力なスパイスがまたヘタレには効くのですよね。こんな魅了的な登場人物以外にも、この映画の楽しいところは、幸世と彼女たちの関係を象徴するかのように様々な挿入曲が入ります。この挿入曲の詞が幸世の気持を代弁して、字幕まで付いちゃう(カラオケ気分)。そして最高にハッピーなときには、Perfumeと一緒にダンス!!。曲=幸世の気持ちですから、全然変じゃなく、ここまで分かりやすい表現はないです。しかし、途中からみゆきの完璧すぎる彼氏ダイスケ(金子ノブアキ)が登場してから、一転してこの楽しい展開が↓。さらにみゆきの「幸世くんじゃ、成長できない」の言葉に凹。それまで楽しいシーンの数々だったので、すっかりこちらまで憂鬱な気分で、この野郎ダイスケと思うくらい。でもヘタレも成長するのですよね。

【予告編】

2011年作品。118分。
・出演:森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依沙、真木よう子、リリー・フランキー、金子ノブアキ
・監督:大根仁
・音楽:岩崎太整
・主題歌:「夜明けのBEAT」 フジファブリック
・原作:「モテキ」久保ミツロウ


台風クラブ



 長野のある田舎町。夜中の中学校のプールで「BARBEE BOYS」の「暗闇でDANCE」のビートに合わせて踊る女子生徒たち。その様子をプールの中から目から上だけ出して窺う男子生徒。中学生たちの青春映画の幕開け、かな。でも、少しずつ近づく台風に影響されたかの様に、淡い恋心や甘酸っぱい青春などは木の葉のごとく吹き飛ばされ、普通の中学生たちの強風と豪雨の狂った青春映像に、ただただ驚かされます。
 鏡越しに見せる非現実世界的な校内でのレズシーン。化学の時間に好きな女子の背中に劇薬を垂らし怪我を負わせる男子。さらに保健室で怪我させられた女子の上半身裸の背中に、養護教諭に顔を押し付けられるその男子。遅刻して母の布団の抜け殻に潜り込み自慰をする女子理江(工藤夕貴)。など次々とエッ!と思わせるシーンのオンパレードで、当時(1985年)本当に一般上映したの?と疑いたくなる内容です。そして、台風が最も近づいたときに、学校内に閉じ込められた彼らの行動は、台風の威力に同期してさらにエスカレートしていきます。演劇部部室でキスをしながらお互いの服を脱がせる女子たち。二人きりの教室で女子を襲う男子。さらに職員室に逃げ込んだ女子を追いかけ、無表情でドアを蹴り続け壊わしてゆく。まるで「シャイニング」(ジャックの表情は豊か過ぎるほどですが・・)。東京に行き、見知らぬ男性のアパートに上がりこむ理江。そしてさらにテンションが上がった彼らは、台風の中、校庭に出て下着姿になり踊り狂う。あまりストーリ性は無いですが、この中学生達の一時の狂気を、「セーラ服と機関銃」、「翔んだカップル」、「ションベンライダー」と若者映画を撮っていた相米慎二監督が描き出しています。そしてもちろん台風ですから過ぎ去ってゆく。その後の晴天の中、理江が表現した金閣寺のように池に浮かぶ校舎が映し出され、その後の彼らの顛末はどうなったのでしょうか。行く末はどうなるのでしょうか。・・台風のごとく一過性かな。んーむ、想像と違い衝撃的な映画だったな。

1985年作品。96分。
・出演:三上祐一、工藤夕貴、大西結花、三浦友和、尾美としのり
・監督:相米慎二
・音楽:三枝成彰
・挿入曲:「暗闇のDANCE」、「翔んでみせろ」 BARBEE BOYS





<相米慎二監督>
「セーラー服と機関銃」(’81:薬師丸ひろ子主演)、「翔んだカップル」(’80:薬師丸ひろ子主演)、「ションベンライダー」(’83:河合美智子・永瀬正敏主演)、と若者映画監督のイメージが強いのですね。他にも牧瀬里穂さんや斉藤由貴さん主演映画を撮られているようですが未見です。そして、残念ながら2001年に若くして亡くなられていて遺作は「風花」(‘01:小泉今日子主演)。あらためて相米慎二監督が描く人物たちを見たくなりました。

  


ゴールデンスランバー



 仙台の中心街で大学時代の友人と釣りの待ち合わせをする青柳雅春(堺雅人)。服装も装備も完全に釣り人な青柳と対照的に何故かスーツ姿で待つ友人森田(吉岡秀隆)。森田に連れられ大通りから少し入った小道に停めた車の中で昔話しをするが、やがて森田から手渡されたペットボトルの水を飲みハンドルにもたれて寝てしまう。暫くの後、目を覚ますと大通りには首相の凱旋パレードで湧き上がる声が聞こえる。と突然、爆発音が響き、後ろを振り向くと辺りに白煙が舞い上がり、歓声が悲鳴へと変わっていた。すぐさま、警官二人が真っ直ぐ車に近づき、慌てて外に飛び出す青柳に銃口を向け躊躇無く発砲する。突然の銃声に慌てて立ち止まる青柳。一呼吸後、森田の車が警察官二人を巻き込み爆発。そして青柳は、首相の暗殺容疑者として追われる身になる。この出だしから始まる逃亡劇が日本映画としては珍しいスピード感があり、ぐいぐい映画の中に引き込まれていきます。また、青柳を犯人に陥れ抹殺する陰謀も用意周到で、逃亡する青柳包囲網があっというまに狭まる恐怖も凄い。暗殺後すぐに警察庁が捜査指揮を執り、公共交通網の全面ストップとテロリスト青柳への発砲命令が下される。さらに暗殺方法が特定され、そこに至るまでの青柳の怪しむべき行動の監視カメラ映像が公開される。もちろん青柳には身に覚えの無い映像の数々で、青柳の知り合いにも圧力がかかる。普通ならここでGAME OVERで権力の闇に葬られるところですが、予想もしない救いの手が入るから面白い。それは濱田岳さん演じる連続通り魔殺人犯の「キルオ」。黒いパーカーで顔を隠し、腰にはナイフ、朴訥とした喋り方から想像しがたい素早い動きで、狙った獲物をグサリ。決め言葉は「びっくりした?」。このキルオが気まぐれで青柳を助けたことから、警察の思惑から外れて青柳は逃亡し続ける。そして逃亡し続けることで、さらに救いの手が増えてゆく。元カノの晴子(竹内結子)、宅配便同僚のロッカー岩崎(渋川清彦)、偶然青柳と出会う裏家業保土ヶ谷(柄本明)、青柳の学生時代のバイト先の花火屋轟親子(ベンガル)、青柳を信じテレビ放送で「ちゃっちゃっと逃げろ」を言う父親(伊藤四郎)、かつて青柳が暴漢から助けたアイドル凛香(貫地谷かほり)。彼らが、青柳が信じる人間の最大の武器「信頼」を行動に起こしてくれるところがこの映画の見せ場でしょうね。そしてこの救い手たちと対極にある権力として、捜査指揮官の佐々木警視正(香川照之)、ニヤニヤしながら平気でショットガンを撃ちまくる小鳩沢(永島敏行)、表情を変えずに圧力をかけてくる近藤刑事(石丸謙二郎)などの強力キャラクターが登場することで、簡単には逃れられない緊迫感を高めて、映画のクライマックスへと進んでいきます。そして、少し長めの後日談がいいです。すでにいないはずの青柳から救い手たちに届く本人たちにしか分からないメッセージ。逃亡の末が幸せかは分かりませんが、物語の締めくくりとしては心地いいものです。

【予告編】

2010年作品。139分。
・出演:堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、濱田岳、香川照之、永島敏行、柄本明、ベンガル、相武沙季、貫地谷かほり、ソニン
・監督:中村義洋
・音楽:斉藤和義
・主題歌:「Golden Slumbers」斉藤和義
・原作:「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎

 



<中村義洋監督と伊坂幸太郎原作>
「ゴールデンスランバー」は、伊坂幸太郎氏原作の緻密なサスペンスを見事に映像化されています。この映画以外に中村義洋監督と伊坂幸太郎氏原作のタッグは、「アヒルと鴨のコインロッカー」(’07)、「ラッシュライフ」(’09)があり、それぞれアパートの隣人から泥棒の手助けをさせられる気の弱い大学生役として濱田岳さん、独自の哲学を持つ泥棒役として堺雅人さんが登場します。

 


遊びの時間は終わらない



 無銭飲食犯を連行する真面目な警察官平田。しかし自宅に戻ると、犯罪史や事件実録ものビデオや新聞記事のスクラップが溢れ、指先に指紋を隠す指サック、懐に大きなものを隠せるゆったりとしたロングコートを身にまとい、スーツケースの中から自動小銃アーマライトM-16を取り出し銃口をこちらに向ける。そして、相棒を車で待たせて閉店間近の信用組合に変装して入り、窓口で預金通帳を使って現金の要求。さらに偶然その現場に立ち寄った刑事に気付き、銃口を向けて「バーン」・・・と口で言う。おっ、警察官による犯罪バイオレンスの始まり?ん?シーンは地方警察の署長室に変わり、強盗の連絡が入るも、ゆるく談笑する警察幹部たち。どうやら、これは地域一体で取り組んだ強盗訓練らしい。らしいとは、犯人役の警察官平田は、あっさり捕まらず、職員や客を人質に取り何故か立て篭もってしまう。しかし、人質は後ろ手に縛られるのではなく、首から「人質」札をかけられるだけ、撃たれた刑事は「死体」の札。警察官平田は上司から「筋書きがなく、臨機応変に対処しろ」と命じられ、超真面目で融通が利かないで命令に忠実に任務を全うする性格のため、すっかり犯人になりきってしまうが、訓練という位置づけもしっかり守るという真面目男ならではの展開となっています。この警察官平田に本木雅弘さん。その端整な顔つきが、ワイルドと超がつくほど真面目を兼ね備えた男にうまくマッチしていていいです。人質に取られた客(実は警官)から諭されても、「ボク犯人ですから」と飄々と流したり、口うるさい女性職員を待たせて腕立て伏せをしてから、「アレはこれ位体力使うでしょう」と、その後「人質」札を「レイプ」の札に掛けかえたりと、どこまで訓練前提の本気感がいいです。ですが、周りがどうもバタバタしていて安っぽくなっていたかも。権力を笠に作戦を立案するがことごとく失敗する警察官幹部(石橋蓮司さん、原田大二郎さん)や、早く終わらないかと思いながらも付き合う人質たち、トイレを我慢し続ける「死体」刑事、そしてこの事件?の警察と犯人の行動を客観的に判断して何度も「意義あり」とやり直しを迫るローカルテレビ局キャスター(萩原流行さん)、安全だと分かっているから犯人を応援する観衆や、ノリノリの平田の両親など、設定はなかなかいいので、もっとシリアルとコメディがうまく融合できていれば面白い作品になっていたかも・・。でも、この進退窮まる緊張感に耐え切れず実弾を撃ってしまう狙撃者のシーンからの、遊びからの本気雰囲気の流れは好きですけどね。

【予告編】

1991年作品。111分。
・出演:本木雅弘、石橋蓮司、西川忠志、伊藤真美、萩原流行、斎藤晴彦、原田大二郎、今井雅之
・監督:萩庭貞明
・音楽:高木完
・原作:「遊びの時間は終わらない」都井邦彦


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Author:jurrin
映画大好き人間でやんす。日本映画好きでやんす。新旧問わず好きでやんす。
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