本陣殺人事件



 五月間近の季節はずれの雪が降りしきる中、かつて大名の本陣が置かれた岡山の旧家で当主の婚儀が執り行なわれて、披露宴を終え初夜を迎えるべく離屋に下がる新郎新婦。その深夜、女性の悲鳴とかき鳴らされる琴の音と空気を引き裂く切れた弦の音が響く。慌てて親族が離屋に向かうと、中庭には怪しく光る日本刀が突き刺さり、離屋は内側から閂がかけられた密室。そして雨戸を打ち破ると、部屋の中は、不自然な手をして血に染まる白装束姿の折り重なる新郎新婦と、壁に三本の指でなぞられたような血の跡が残されていた。

まさに密室殺人事件。

ここに名探偵「金田一耕助」が登場。しかし、もじゃもじゃ頭のヨレヨレはかま姿の金田一ではなく、70年代のジーンズ姿の金田一(中尾彬)。髪の毛はかきむしっていますが、ごっついサングラスをかけイメージはまったく別人です。でも意外と渋さがあっていいかも。この70年代金田一が新婦の叔父に頼まれ現れると、あっさり警察の協力者になり、あっというまに現場検証すると遺留品を発見、そして殺人事件のトリックに関わる物的証拠にまで気付いてしまうほどの名探偵ぶりを発揮します。しかし、金田一の前に立ちはだかる、三本指男の謎の足取り、新婦の過去を知る女性の登場、当主の弟を襲う第二の事件、が難解の道へと誘う反面、真相へのヒントにもなっています。また当主の知恵遅れの妹が登場させて、彼女の言動で不安をいだかせますが、これもヒント。そして途中からは、ある人物の回想と金田一の推理が交差する形で、事件の真相とトリックと真犯人が暴かれていきます。

昔ならではの探偵推理モノは面白い。

アレ、音楽が大林宣彦監督だ。

【予告編】

1975年作品。
・出演:中尾彬、田村高廣、新田章、水原ゆう紀、東野孝彦、常田富士男
・監督:高林陽一
・音楽:大林宣彦
・原作:「本陣殺人事件」 横溝正史

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犬神家の一族



 信州の製薬王犬神佐兵衛(三国連太郎)が亡くなり、その莫大な遺産の行方が気がかりの一族が集まるが、佐兵衛の遺書には、血縁でない珠世(島田陽子)への全財産相続が記され、佐兵衛の三人の孫、佐清、佐武、佐智のいずれかとの結婚がその条件とされていた。そしてこの出来事に不安をおぼえた弁護士の依頼を受けて探偵金田一耕助(石坂浩二)が屋敷に招かれるが、次々と殺人事件が発生する。

 戦後間もない田舎の雰囲気が漂う町で、湖畔の大豪邸で床に伏す老人を見守る多くの人々のシーンからはじまり、いきなり重々しい空気が身を包みます。原作、脚本、演出、俳優さんが見事に融合して、これぞエンターテイメントミステリーとしての地位を一躍確立した作品で、ストーリーと設定と映像が・・絶妙です。3の数字が基軸となる設定が怪しげで興味を引き立たせる。佐兵衛の腹違いの娘、松子、竹子、梅子。それぞれの息子の佐清、佐武、佐智。犬神家の家宝の斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)。そして微妙に保たれている3の数字の調和に、遺産相続された珠代と三姉妹に苛められた妾の子青沼静馬が入り込むことで、そのバランスが崩れ、雪崩のように不幸へと転がり墜ちてゆく犬神家。そして、3つの家宝に絡めた殺人事件とその遺体遺棄方法なども映像を意識してインパクト十分です。湖に逆さに足だけ見えているシーンなどは、この映画の代名詞になるほど。そして。一癖も二癖もある登場人物たちが、一族の繁栄よりも欲に渦に身を委ね黒くていい。更に戦争で焼けただれた顔を隠すために不気味なマスクを被る佐清と名乗る男。最初、頭巾を被り、周りから疑われ頭巾を取ると、目だけが強調された能面のような白いゴムマスク姿、そこで一同はぎょっとするが、更にそのゴムマスクをめくると・・。といった趣向もこの映画のおどろおどろしさを増すひとつとなっています。そして探偵金田一耕助は石坂浩二さん。よれよれの和服姿とボサボサ髪のイケメン。でも雰囲気は三枚目。数多くの俳優さんが金田一耕助を演じていますが、やっぱり石坂金田一耕助が、一番しっくりくるかな。そしてこの重苦しい世界にも、金田一が宿泊するホテルの女中の坂口良子さんや「よしわかった!」とすぐに結論を急ぐ憎めない等々力警部の加藤武さんのカットが、清涼剤のようにリラックスさせてくれますが、映画はもちろん連続殺人事件&探偵のミステリー。のはずですが、ブラックな登場人物が多いせいか、誰が殺人犯?といったドキドキするようなものではなく、ある一族の顛末記を同じ空間で体感しているかのようでした。

【予告編】

1975年作品。146分。
・監督:市川崑
・出演:石坂浩二、島田陽子、あおい輝彦、高峰美枝子、加藤武、坂口良子。
・音楽:大野雄二



<石坂金田一耕助と市川崑監督>
この「犬神家の一族」でセンセーショナルに登場した石坂金田一耕助と市川崑監督。このコンビの作品は、これ以降も5作られています。手毬歌の沿った連続殺人事件の「悪魔の手毬唄」(’77)、三姉妹連続殺人事件の「獄門島」(’77)、「女王蜂」(‘78)、「病院坂の首縊りの家」(‘79)、リメイク版「犬神家の一族」(‘06)。

   

【悪魔の手毬唄:予告編】
【獄門島:予告編】
【女王蜂:予告編】
【病院坂の首縊りの家:予告編】


待ち伏せ



 用心棒の鎬刀三郎は、「からす」と名乗る人物から、ある場所に行って何かが起こるまで待てという仕事を請け負う。刀三郎が指定された三州峠に向かうと、そこには孫娘と祖父二人で切り盛りする茶屋があった。やがて茶屋に、若い渡世人弥太郎、居候の元医者玄哲、捕まえた盗人を連れた役人伊吹兵馬が現れ、さらに盗人を助けようとする盗賊たちが迫っていた。

 信州の伊那と諏訪を結ぶ三州峠の茶屋「みの屋」に集まる人々がある事件に巻き込まれてゆく物語で、ほぼ茶屋とその周辺のみが舞台となっています。この茶屋に偶然か、必然か、集まる人々の設定とキャスティングがいいです。まずは、どこかで見たことのある無精ひげの薄汚れた浪人。生業は用心棒で勿論凄腕。でも人が困っているとついつい手助けてしまう人の良さで、旦那からDVに合っている女性を助け連れ出してしまうほど。こんな強くて優しい浪人といえば・・、もちろん、三船敏郎さんしかいません。そして、威勢がいい合羽姿の若い渡世人に石原裕次郎さん。髪型は現代風カットにちょん髷と違和感がありますが・・。茶屋の納屋に居候する総髪の元医者に勝新太郎さん。この男は納屋に何か秘密を隠す謎の部分がありながら、女性にすぐアタックする自由奔放な性格。勝新さん合ってますよ。更に、盗人を捕まえるときに大怪我をして茶屋に盗人共々転がり込む役人に中村錦之助さん。助けてもらいながら疑り深い役人の傲慢さを、高い声と独特な喋り方で表現していて、イヤミな奴をすんなりと演じています。旦那のDVから用心棒の手を借りて逃げ出し、茶屋にお世話になる女性に浅丘ルリ子さん。ただただ綺麗です。あとは茶屋の元気娘に北川美佳さん。名前は知りませんでしたが、どうやら三船敏郎さんの娘三船美佳さんの母のようです。この豪華キャストが演じる一癖も二癖もあるキャラたちが茶屋という個室に集まり、これから迫って来る出来事の前の伏線作りが、ラブを絡めて時代劇らしからぬサスペンス感でなかなかいいです。納屋に秘密を隠す元医者と茶屋の祖父、怪我をした役人と盗人の手当てでもめる登場人物たち、役人と顔を合わせない渡世人の過去、渡世人に憧れる茶屋娘、浪人を慕う女性、その女性を狙う元医者、そしてDV旦那登場と、飽きを感じさせません。さらに迫って来る盗賊たちのある計画とは、その計画のボスは、浪人がここに呼ばれた訳は、とサスペンスは途切れず、いざクライマックスへ。あれ?ここまではなかなかいい線いってたのに、その後のアクションと映像が弱すぎです。舞台も茶屋を離れたとたんに、峠がどうも広すぎる現代風の道で(これアスファルトじゃない?)、斬りあいシーンも、捕り物シーンも迫力が無い。もしかしたらクライマックスはおまけで、ここまでの伏線を見せるのがこの映画の狙いだったのかもしれません??。

1970年作品。
・出演:三船敏郎、石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助、浅岡ルリ子、北川美佳、有島一郎
・監督:稲垣浩
・音楽:佐藤勝




<浪人・・郎>
三船敏郎さん演じる凄腕浪人は、「用心棒」(’61)の桑畑三十郎から始まり、「椿三十郎」(’62)、テレビドラマ「荒野の素浪人」(’72)の峠九十郎(ちょっと姿は違いますが・・)、「座頭市と用心棒」('70)(名前は・・郎ではなく大作)と数多く登場し、どれを見ても渋くかっこいいです。なかなか三船さんを越える個性豊かな浪人を演じられる俳優さんは出てきませんね。
 


狂った野獣



 銀行強盗に失敗した犯人たち(片桐竜次、川谷拓三)が、近くを通りかかったバスをバスジャックする。乗客たちは恐怖におののくが、その中に犯人を気にも留めない男(渡瀬恒彦)がいた。そして、バスジャック犯人たちと警察の攻防が始まり、さらにもう一つの事件が絡み意外な展開となってゆく。

 銀行強盗に失敗した犯人がバスジャックして、恐怖におののく乗客と警察の攻防。といった単純ストーリーではなく、バス内の人々の人間模様ともう一つの事件との絡みと意外な展開、そしてカーアクションというよりは車を破壊するシーン満載の映画です。バス内の人々ひとりひとりの設定が妙で、まず犯人の片桐竜次さんと川谷拓三さんコンビ、警察に追われる恐怖を乗客たちにぶつけ、刻々とそのアドレナリン率が高まり落ち着きを無くしてゆき、乗客達に恐怖を伝染させていきます。特に川谷拓三の小心者設定で恐怖を隠しきれない人物像が絶妙。そして、ビシッときめた容姿とサングラス姿の渡瀬恒彦さん、犯人など気に留めずタバコを吸ったり、酒を飲んだり、でも大事そうに楽器ケースを抱える謎の印象があります。それ以外に何か事情があり降ろしてくれと嘆願する女性、口うるさいおばさん、チンドン屋たち、飄々として平気でバナナを食らう老人、髪の毛をセットしたままの女性、小学生二人、そ知らぬ顔で競馬新聞を読む労務者、教師と生徒の母の不倫カップル、心臓に持病を持ち緊張すると命が危ない運転手と個性豊かな乗員・乗客たちを揃え、それぞれが映画のコマの中でしっかりと主張します。そしてバスの外にも、バスをバイクで追う謎の女性や、熱血刑事と白バイ隊員と映画の味を更に高めるスパイス要素が用意され、事件の経過を伝えるラジオDJはモサモサ頭時代の笑福亭鶴瓶さん、とここにもスパイスが。映画半ばまではそのバスジャック犯人と乗客たちのサスペンス恐怖がメインですが、途中からは意外な人物がバスジャックを更にバスジャックする驚きの展開。そこから、本当のバスジャックと警察の攻防が始まり、車がつぶれる、ぶっ飛ぶ、転がる、爆発するシーンが満載。でも場所が安全を見てか?限定した場所なのは日本らしいですが・・。さらにこの映画はところどころになぜかコメディ要素が取り入れられるサービスまであり、ラストのバスジャック犯人たちの結末と相反するもうひとつの事件の犯人たちの犯罪が乗客たちとの利害関係でなかったことにされるのもコメディといえばコメディなのかもしれません。

1976年作品。78分。
・出演:渡瀬恒彦、星野じゅん、川谷拓三、片桐竜次、白川浩二郎、橘麻紀、志賀勝、三上寛、笑福亭鶴瓶
・監督:中島貞夫
・音楽:広瀬健次郎

【予告編】





<バスジャックが登場する映画>
バスジャックされた人々が傷ついた心を癒そうとする「ユリイカ」('00:役所広司、宮崎あおい)、自分を追う警察の素性を知ろうとバスジャックを仕込む「デスノート」('06:藤原竜也)、実際に起こったブラジルのバスジャック事件のドキュメンタリー「バス174」('05日本公開ブラジル作品)
  



八月の濡れた砂



 夏の湘南。やりきれずはけ口を捜してバイクを乗り回す西本清(広瀬昌助)は、夜中に若者達から乱暴されて車から捨てられる三原早苗(テレサ野田)を拾って助けるが、ふとして隙に彼女は消えてしまう。やがて、清は早苗と再会して、悪友の高校中退の野上健一郎(村野武範)らと共にひと夏を過ごす。

 70年代若者の目的も見つけられず、やる気もなくその日を暮らす(潰す)青春群像映画なのかな。時代は違っても、若者の頭の中はセックスでいっぱい。だから隙あらば、そっちに傾いてゆく。ただ、この映画でのセックスは、レイプまがいで強引。ラブラブという感じは無く、男の欲望むき出しで、当時はこんな感じ?と勘違いしてしまいます。登場する若者は愛人の子で高校中退で無駄な日を過ごす青年に村野武範さん、この後テレビ青春ドラマの先生のイメージが強いので、海のシャワー室やクルーザ上で強引に女性を襲うギャップがどうも・・。そして悪にはなりきれずバイクを飛ばして気晴らしする青年に広瀬昌助さん。こちらの方は、よくいる普通の青年ですが、彼の欲望のはけ口とその罪悪感との葛藤が本当の青年像のように思えます。当初は、沖昌也さんが予定されていたようなので、沖さんがやっていたら、全然別の青年像になっていたでしょう。そこに自由奔放な少女と保護者的姉、真面目だけれど焚き付けられ暴挙に出てしまう青年、優等生の少女など、多くのキャラを用意して彼らの方向性が見つけられない、ある意味破滅的なひと夏が繰り広げられます。舞台の湘南は懐かしい海の家に、今と変わらず賑わう海と浜辺。そしてロックミュージックが生演奏され、40年前なのに、今でも継承されるいる風景が見られるのが、なかなかオツです。スカイラインハコスカなども登場。そして、この映画は色の使い方が強烈なのも印象的で、青と赤を極端に画面いっぱいに広げ、若者達の曖昧さからの脱却したいという心の中を表現しているのでしょうか。

1971年公開。91分。
・主演:広瀬昌助、村野武範、テレサ野田、藤田みどり、中沢治夫、赤塚真人、隅田和代、奈良あけみ、地井武男
・監督;藤田敏八
・音楽:むつひろし、ペペ
・主題歌:「八月の濡れた砂」 石川セリ

【予告編】 【この作品をレンタルする】 【この主題曲をレンタルする】





<ハコスカ>
早苗の姉の車で清が姉に襲いかかろうとしてシフトギアを折ってしまう。日産スカイライン3代目、ハコスカという愛称があるくらい昔は有名な車です。最近では洋画「ワイルド・スピード MEGA MAX」('12米)、「ほしのふるまち」('11)に登場してます。気が付かなかったけど、旧い映画になら出てるのかな?




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