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予兆 散歩する侵略者



 悦子(夏帆)は、同僚のみゆきから「家に幽霊がいる」から泊めてと頼まれ、翌日彼女の家に行くとそこには彼女の父親しかいなかった。悦子はみゆきを夫辰雄(染谷将太)の勤める病院に連れていくが、みゆきの症状は「家族」の概念が失われているためと診断される。そして、その帰りに病院で夫辰雄から外科医真壁(東出昌大)を紹介されるが、悦子は真壁に違和感と嫌悪感を感じる。やがて夫辰雄は日々精神的に不安定なり、それがいつも真壁と病院内外で行動を共にしていることが原因ではないかと疑い始める。




 「散歩する侵略者」のアナザー・ストーリーで、テレビ5話分を140分にまとめた劇場版です。
「散歩する侵略者」では、早々と種が明かされ、何が起こって進行しているのが分かりますが、「予兆」は、夏帆演じる「悦子」が、ある日、夫「辰雄」の雰囲気の違和感と同僚「みゆき」の「家に幽霊がいる」の助けを求める言葉、そして夫の同僚医師「真壁」に初めて会った時に嫌悪を感じるところから始まります。やがて、辰雄が右手に痛みを感じ時折物が持てなくなっていることと、辰雄とあの真壁がいつも一緒にいて、病院の外にも出かけ行動を共にしていることを知る。そして、みゆきが幽霊と言っていたものが、みゆきの実の父であることを知り、得体の知れない不安が増していく悦子が描かれています。さらに、悦子自身にも見ている物体が揺らぐ現象が現れ、不安が増長されていきます。このなにか分からない、まさしくこれからなにかが起こる「予兆」の不安感が、見ている側に伝わり、心理的に圧迫されてくる黒沢監督ならではの作りとなっています。この不安と圧迫感、そして恐怖に一役買っているのが、医師「真壁」を演じる東出昌大さんですね。目を見開いて瞬きせず、高身長から首を少し前に出して上から人々を覗き込む姿が、まず怖い。そして人の感情をまったく感じない淡々として口調で歩み寄ってきて、人さし指を立て、人の額にその指を当てようとする。作品内でもあった人間でない「異物」そのもので、怖いですよ。「寄生獣」(2014年/2015年)でも「異物」を演じ、感情のない笑み姿が記憶にあり、この手の演技は流石です。そして、真壁と相反するかのような「辰雄」に染谷将太さん。常に何かに脅えているが、突然攻撃的になり、そして後悔したりと、徐々に神経が衰弱していく姿が見ていて辛くなる一方、人間の弱さが表現され、谷底に落ちていくような演技です。

 ものがたりは、みゆきの症状が、彼女から「家族」の概念が失われているらしく、世界中で同じ症例が報告されていることで事態に広がりを見せ、辰雄と真壁が町を出歩き行っている行為が、その異常症状を引き起こしていることが明らかになります。このシーンは「異物」に、人間の醜い感情と行動を曝け出し、知られてしまう嫌なシーンでもあります。そして、この異常事態を収拾するために、自称「厚生省」の役人まがいの屈強の男たちが登場し、彼らを制圧、いや話し合いに持ち込もうとしますが、彼らには「平和的解決」や「共存共栄」などの概念がありませんから・・、もう絶望しかありません。

 そして、主人公、悦子は厚生省の作戦など、どうでもよく、ただ衰弱していく辰雄を救いたい。そのためには辰雄の心を支配している真壁からの解放を第一に考え、ひとり行動をおこします。圧倒的な力の彼らに対抗すべく僅かの希望として、悦子は驚きの能力を発揮します(この能力は最後まで解明されずにモヤモヤが残りますが・・・)。悦子は辰雄を救えるのか、彼らの目的を阻止できるのか、クライマックスへ突入です。
 
アナザーストーリーの方が、本編より面白いです。
そして、さあ、彼らの目的「地球侵略」の始まりです。



2017年。140分。
・監督:黒沢清
・出演:夏帆、染谷将太、東出昌大、中村映里子、岸井ゆきの、大杉蓮
・脚本:高橋洋、黒沢清
・音楽:林祐介
・原作:「散歩する侵略者」前川知大



<ホラーサスペンス黒沢清監督>
 心理的に怖いホラーサスペンス作品を多く世に送り出しています。最近では「クリーピー偽りの隣人」(2016年)で行方不明者が多い地区の怪しい隣人と真相を調査する犯罪心理学者を描いています。個人的には、役所広司さんとタッグを組んだ作品たちが好みです。猟奇殺人犯を追う刑事(役所広司)が容疑者と関り逆に追い詰められてゆく「CURE」(1997年)、籠城事件で犯人と人質を死なせてしまった刑事(役所広司)が休暇地でカリスマと呼ばれる奇妙な木と出会う「カリスマ」(2000年)、医療機器メーカの開発者(役所広司)が狂暴なドッベルゲンガーに支配される「ドッペルゲンガー」(2003年)、連続殺人事件を追う刑事(役所広司)が現場に自分の遺留品が残されていることを知り自分が犯人ではないかと疑う「叫」(2007年)などなど異質で面白い作品が多いです。

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散歩する侵略者



 イラストレータの鳴海(長澤まさみ)の行方不明だった夫「真治」(松田龍平)が記憶を失い帰ってくる。夫は記憶喪失の上に初めて人間社会に接するかのような行動を見せ、鳴海にガイドになってほしいと不思議なことを言う。翌日から、鳴海の心配をよそに夫は町に出歩くようになり、鳴海に「地球を侵略しにきた。人間の概念を集めている」と告げる。



 蝉が鳴き、日が傾きかけ日差しが落ちた夏の夕方、金魚すくいのビニール袋を片手に持ち家路につく女子高生。彼女が自宅に戻りしばらくして、助けを求め玄関から老婆が飛び出す。しかし、何ものかに家の中へと引きずりこまれ、ドアは無常にも閉じられる。家の中は荒らされ、血だまりの中に転がる何体もの死体と金魚、そして、その脇に佇む、半身に血を浴びた少女。彼女は血のついた自分の掌をゆっくり回しながら不思議そうな表情で眺め、やがてその手を口に持ってゆく。

 恐ろしいなにかが始まる予兆・・、いや始まりました。

 別の場所では、行方不明だった夫を迎えに病院に行く妻。そこには記憶を失い、まるで別人のように訳のわからないことを口にする夫の姿を目にする。夫は、妻に俺のガイドになってくれないかと、やはり訳のわからない言葉を発する。そして、あの殺人事件現場では、少しやさぐれたジャーナリストが取材を行っていると、不思議な少年が近付いてきて、俺のガイドになって欲しいと告げる。怪訝そうなジャーナリストは、目的はなにかと少年に尋ねると、「目的は地球の侵略」と応え、取材車に乗り込む。

 なかなか、何か得体のしれない不思議、いや恐怖と気味悪さを感じさせるオープニングに、これから始まる黒沢清ワールドに期待が高まります。

 その不思議な人たちは、街を出歩き、めぼしい人間に出会うと、欲しいキーワードの質問をして「もらうよ」と呟き、額にぽつりと指を当てる。相手の人間は涙をポロリと流し、その場に崩れ落ちる。彼らは、人間から概念を奪い取る能力を持ち、たくさんの概念を収集する人々、いや、「侵略者」。彼らの妙な明るさの中に、冷たい何かを感じることが、とにかく怖いです。そんな彼らを演じるのは、記憶喪失の男「真治」に松田龍平さん。「舟を編む」の馬締、「探偵はBARにいる」の高田など、ぬぼーっとした役がよく似合います。ジャーナリストと行動を共にする少年「天野」に高杉真宙さん。端正な顔で大きな瞳で見つめ、少し高圧的な態度に心が見透かされるようで怖い。殺人事件の生き残りの少女「立花あきら」に恒松祐里さん。この娘が一番怖い。成人男性を容赦なく躊躇なくなぎ倒し、無表情で意図も簡単に撃ち殺してゆく。この怖さを秘めた人物像を描くのが黒沢ワールドの一つの特徴でもあります。最近では、「クリーピー」(2016年)の周囲に行方不明者がいる怪しい隣人西野(香川照之)、古いところでは「CURE」(1997年)の猟奇殺人事件に関わる男(萩原聖人)などなど。今作品も、その不気味さと不快感の人物描写は健在です。

 一方、彼らの人間社会のガイドなる人々は、「真治」のガイドの妻「鳴海」に長澤まさみさん。夫の不貞を知っていて、夫婦仲は破綻しているため、夫の記憶喪失にも懐疑的で常に怒りとあきれモード。「天野」のガイドのジャーナリスト「桜井」に長谷川博巳さん。やさぐれて、いやいや始めたバラバラ殺人事件の取材で怪しい少年と出会ったことから、とんでもないネタを掴んだかもと懐疑的ながら野心の抱く男。このガイドたちがいて、人間社会の秩序となっているからこそ、その道理から外れる侵略者の怖さが引き立つ絶妙な設定です。

 さらに、彼らを追う謎の組織が登場し、彼らの確保と抹殺を企てることから、ただの概念収集旅だけでは終わらず、その攻防に緊張感が増します。組織はちなみに自称「厚生省」なのでお役所=公務員さんたちですかね。その割にはサブマシンガンなど隠し持っていますけれど。
 この、侵略者-ガイド VS 謎の組織、の駆け引きに加え、概念を奪い取られる人々が混ざり込む。概念を奪い取られて異常をきたす人間がいる一方、固執していた概念を奪われたことにより、自由になった人々(ひきこもりからの解放、学歴コンプからの解放、義務からの解放など)も描かれ、メッセージ性も帯びているとは・・よく練られたストーリーです。そして侵略者とガイドの一方的な侵略と諦め従う人々の関係から、行動を共にし、人間の概念を奪いながら様々な人物を出会うことで、侵略者にわずかばかりの変化が現れ、ガイドにも侵略者へのわずかばかりの理解が進むことが、ものがたりのテーマにもなっているのかなと感じさせます。

 そして、いよいよ侵略の始まりです。



2017年公開。129分
・監督:黒沢清
・出演:長澤まさみ、松田龍平、長谷川博巳、高杉真宙、恒松祐里、小泉今日子、満島真之介、前田敦子、笹野高史、東出昌大
・音楽:林祐介



<侵略者たち>
 いままでも様々侵略者が知らないうちに日常社会に入り込んできました。日本映画では、人間の頭部を乗っ取り人間排除を企てる「寄生獣」(2014年)。海外映画では、人間を洗脳して支配しようとする「ゼイリブ」(1988年)、そして知り合いが次々と別人のようになってゆく「SF/ボディースナッチャー」(1978年)、この作品は「ボディースナッチャー/恐怖の街」(1956年)、「インベージョン」(2007年)と3作品作られています。他にも、宇宙観測所で金属音を探知したことから何者かに狙われる「アバイバル」(1996年)などなど、いつのまにか周りが知らない何かに入れ変わっていますよ。





六月燈の三姉妹



 スーツ姿の男が鹿児島空港に降り立ち、汗だくになりながら向かうのは、少しさびれた商店街の一角にある和菓子「とら屋」。彼は離婚調停中の妻(吹石一恵)と、もう一度話をするためにやってきたが、彼女の離婚の意思は固かった。さらに「とら屋」は存続が危ぶまれ、もうすぐやってくる六月灯に向けた新製品で盛り返そうと奮闘中であった。その流れの中に自然と夫も取り込まれてゆく。


 「六月燈」。鹿児島の神社で行われる和紙で作った灯篭が飾られる夏のお祭り、だそうです。灯篭の灯りに照らされた神社、街並み、人々が、荘厳でありながら華やかな感じですね。
この六月燈で、少しでも賑わいを取り戻そうとする、少し寂れた真砂商店街が舞台のものがたりです(どうやら実在するみたいですこの商店街)。
この商店街の一角にある和菓子屋「とら屋」。老舗店ですが、この店も存続の危機にある経営状態で、六月燈にあわせ新製品を出してなんとか立ち直したいと奮闘している家族たち。

 この「とら屋」、別名があって、その名は「バツ屋」。仲がよさそうな夫婦の経営のように見えますが、実はこの二人、元夫婦。元夫「眞平」の浮気がばれて離婚となったのですが、元妻「恵子」は、その前にも一度結婚しているのでバツ2。前の夫との間に二人の娘がいて、長女「静江」は、だめんず男と離婚してバツ1の出戻り。二女「奈美江」は東京の税理士と結婚しましたが、姑問題でただいま離婚調停中。さらに前夫に引き取られていたので鹿児島弁が分からず、長女とも他人行儀。「眞平」との間にできた三女「栄」は結婚直前に婚約破棄して、ただいま妻子ある上司と不倫中。と、なかなか訳あり家族です。ここに、二女「奈美江」の夫「平川」が、どうしても、もう一度話をしてよりを戻したいと訪ねてきますが、慣れっこの「バツ屋」家族ですから、仲を取り持つわけでもなく、あたりまえのようにバツ1の道を選択です。それでも、なんとか、よりを戻したい「平川」ですが、頑なに拒否をする「奈美江」。でも翌日の帰りの時間まで、その話は保留にするからと言って店を手伝わせる。なかなか気の強い女性です。さらに「ムリ」と言ったのは先にそっちだから「ムリ」とか、恋愛の果てにあるのは別れとか、挙句の果てには、仕事先の男性から言い寄られてキスをしたと、告げたり、散々、夫をいじめます。いやいや、なかなか可哀そうです「平川」さん。それでも、めげずに「とら屋」を手助けしちゃう。そんな姿を見て久々に笑みが出る「奈美江」。といった二人の微妙な関係の修復?決別?が描かれます。こんなシリアスな関係も、周りの登場人物たちの雰囲気で、ちょっとコメディチックで楽しく見れます。

 一方、「とら屋」再生の最終兵器は、鹿児島特産の「軽羹(かるかん)」にチョコや抹茶をコーディングしてアイスキャンディのようにした「かるキャン」(あまり美味しそうにはみえませんが・・)。映画の中では、さつまいもの新品種「こなみずき」なるものを原料にしているらしいです(味がイメージできません)。この最終兵器を、六月燈で発売!さあ、売れ行きは・・。

 このホームドラマを演じるのは、気の強い二女「奈美江」に、吹石一恵さん。夫へのチクリチクリやいじめの演技が上手く、見ている男性にとっても、なかなかズキズキ突き刺さり辛いです。バツ1だけどしっかりものの長女「静江」に、吉田羊さん。意味がわからないけど流暢に話す鹿児島弁で、自分のことよりも家族のことを考えている長女そのもの。ずけずけと物を言う三女「栄」に、徳永えりさん。あっけらかんとしているようで、悩みを多く抱えて苛立つ姿の危なっかしさがよく伝わってきます。この三姉妹は、幼いころに離れ離れになったり、父が違ったりと、少し複雑な関係で仲が良さそうですが、どこかに一枚壁がある感じです。それでも、この美人三人姉妹が浴衣で歌って踊るキャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」は、息がぴったりで、セクシーで可愛い。必見です。

 そして「奈美江」と「平川」のその後は?。「とら屋」の存亡は?。さらにもう1カップルの行方は?。などなどが、エンディングロールの中で描かれています。ほっこり。



【公式サイト】

2013年公開。104分。
・監督:佐々部清
・出演:吹石一恵、吉田羊、徳永えり、津田寛治、市毛良枝、西田聖志郎
・音楽:寺嶋民哉




あけましておめでとうございます。 そして、ブログへの訪問ありがとうございます。今年も拙いレビューですが、よろしくお願いいたします。

言の葉の庭



 靴職人を目指す高校1年の秋月孝雄は、雨の降る日は1時限目をさぼり、庭園の屋根付きベンチに座って靴のデザインを考えていた。ある日、そのベンチにチョコレートをつまみに缶ビールを飲む女性と出会う。孝雄をどこかで見かけた女性だと思い声を掛けるが、女性は知らないと答えるが、帰り際に「鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」の言葉の残す。そして、その日から雨の降るベンチは二人だけの空間となった。

 15歳で靴職人になる目標に目指し日々努力する少年と人生に躓いてしまった27歳の女性の梅雨の合間のひとときの安らぎと恋ものがたり。とにかく雨の描写が綺麗です。雨に濡れる木の橋を渡る足元。雨の滴と協和するようにリズムを奏でる池に映る緑の草木。そしてこの空間から一歩外へ出たときの、都会の街並みや通勤・通学電車の雨による湿気や濡れによる不快感をも伝わる描写。この実写以上に丁寧過ぎるほど繊細に描かれた映像は、とにかく驚かされます。さすが「秒速5センチメートル」新海誠監督の映像美。ものがたりは、静かに降る雨の中で、靴のデッサンや読書、それぞれが作った弁当をつついたりとあたりまえのように自然に過ごす二人の時を、申し訳ないように共有する自分がいます。やがて梅雨が明け2人をつなぐ雨の言い訳が消えて、再びそれぞれ時間へと戻っていきますが、ある再会をきっかけにして、歩くことを忘れていた女性が悩んでいた次への歩みの姿と、大人びた孝雄が見せる抑えていた15歳らしい姿が、さらけ出され2人の気持が初めてわかりあえます。このシーンは、もちろん雨の中。でも遠くからの一筋の光が2人を照らします(感動的過ぎるほど神々しい)。このバックに流れる秦基博さんが歌う主題歌「Rain」がとにかくいい。まるで映画のために作られたような歌ですが、大江千里さん原曲で、槇原敬之さんがカバーしていた曲でした。いい曲だ。そしてラストは、雨ではなく雪の中のベンチに孝雄の思いが詰まるあるものが置かれ、彼らのものがたりの続きが見たくなります。



2013年公開。46分。
・声:入野自由、花澤香菜、前田剛、平野文
・監督:新海誠
・音楽:KASHIWA Daisuke
・主題歌:「Rain」秦基博

残穢 -住んではいけない部屋-

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 読者の怪奇体験をもとに実話怪談を書く作家わたし(竹内結子)のもとに、ひとりの女子大生久保さん(橋本愛)から手紙が届く。それは引っ越ししたマンションの部屋に、畳を擦るような音がして何かがいる気がするという内容であった。そして半年後に続報の手紙が届き、擦れる音は着物の帯のようで、不思議な光の球体が映し出された部屋の写真も送られてきた。ふと、わたしは、そのマンションの名前に見覚えがあることに気づき、投稿の手紙の束からひとつの手紙を探し当てる。それは2年前に送られてきた手紙で、同じマンションの別の室でも同じように擦れるような音がし、子供がその部屋を凝視して「ぶらんこ」とつぶやいたという内容であった。その後も久保さんからその音にまつわる手紙が届き、いつしか久保さんと電話で話しをするようになる。そして、マンションで過去自殺者がいないこと、前の住人が別のアパートで自殺して赤ん坊の声を気にしていたこと、隣の住人が公衆電話からのいたずら電話に悩まされていること、など聞かされ、マンションが建つ前になにかがあったのではと思い始める。やがて、わたしと久保さんは土地の過去を調査し始め、以前その土地に住んでいた人々の異常な話しを聞くことになる。

 当事者の回顧録のぼそぼそとしたナレーションから始まる、昔よくあった夏の怪奇現象再現ドラマのようなストーリー仕立てから始まります。あるマンションの一室の少しの異変。それはまるで箒で畳を擦るような音。その部屋に住むのは女子大生で、普通なら、ぎゃーっとなって彼女を怪奇現象の魔の手が襲いかかる・・のではなく、彼女は動じない。ミステリー研究会の部長ともあって、そのまま怪奇現象と同居して、その謎まで解明してしまおうと調査に乗り出し、さらにその経過を怪談作家に投稿してしまう。この肝の据わった女子大生を橋本愛さん。そして、読者の投稿をもとに怪談を書く作家で、この物語の語りべ役にもなっているわたしに竹内結子さん。竹内さんの、ぼそぼそとした語りが、陰鬱な雰囲気を増しています。
 そして物語は、このまま得体のしれない恐怖への序章の伏線が張られ、徐々にホラーへの展開を見せるのかと思っていましたが、途中から、あれ、ホラー?では、ないの?と、マンションが建てられる前のその土地の住人達の不思議な話の取材へと変わっていきます。その取材も1世代だけではなく、その前の土地の所有者、さらにその前の土地の所有者と遡り、奇妙な結末を迎えた人々がいたことが明らかとなり、過去を遡ることで、その世代だけでは奇妙だけで終わる出来事が、次々と繋がってゆく謎解きミステリーとなっています。まあ、これはこれで、ミステリーと割り切れば良しかな。そして陰鬱なこの過去探しと並行してマンションの住人と過去の住人に降りかかる災いも描かれ、過去から繋がる何か=「穢れ」に触れることで、未来をも蝕んでゆく恐怖へと広がりを見せます。そして、わたしと久保さんの調査に、同業の怪談作家平岡(佐々木蔵之介)と担当編集者、心霊マニア三澤(坂口健太郎)が興味津津に加わり、穢れの根っこ探しが、その土地を飛び越えてヒートアップしていきます。途中参加の連中は怪奇好きとあってどこか明るく楽しそう、でも、もちろん彼らも穢れに触れてしまっていますが・・。そして最後になって案の定、関係者に忍び寄る穢れ。ようやくホラー映画と化してきますが、肝心なシーンのCGがテレビぽい。もう少し力を入れて欲しかったな。これだけで、テレビ版の「本当にあった怖い話」や「世にも奇妙な物語」のロングバージョンになってしまいましたよ。

【予告編】【公式サイト】【小野不由美「残穢」特設サイト】

2016年公開。107分。
・出演:竹内結子、橋本愛、佐々木蔵之介、遠藤賢一、坂口健太郎
・監督:中村義洋
・音楽:安川午朗
・主題歌:「Strong Fate」和楽器バンド
・原作:「残穢」小野不由美


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jurrin

Author:jurrin
映画大好き人間でやんす。日本映画好きでやんす。新旧問わず好きでやんす。
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