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ほとりの朔子



 大学受験に失敗した朔子(二階堂ふみ)は、叔母の海希江(鶴田真由)の勧めで海が近い伯母の水帆の家に行く。そこで、伯母たちの知り合いの亀田父娘と甥の孝史(太賀)と出会い、ひと夏を過ごす。

 窓の外に海が見え隠れし、窓から入る夏の日差しを浴びながら電車に揺られる朔子。蝉が鳴き、遠くにゆっくりと回る風力発電の風車が望める坂道を、荷物を曳いて登る先は陶芸家の伯母の家。受験勉強の合間の短い夏休みをのんびりとした空間で、のんびりとした時間を過ごす朔子の物語です。勉強のことは忘れて、浜辺で波と戯れたり、庭の木々に水をやったり、自転車に乗って自然の中の川辺に行き、冷たい水の感触を楽しんだりと、のんびりモード。さらに登校拒否の高校生孝史と海で遊んだり散歩したりとゆったりとしたラブモードもあり、満更でもない様子。このまま時間が流れてゆく癒し系映画なのかと思っていましたが、朔子を取り巻く癒しの環境は、実は純粋なものばかりではないという現実の2面性が途中から描かれます。知り合いのおっさん兎吉(古舘寛治)の仕事はビジネスホテルの支配人。でもフロントはカーテンが垂れ下がりカウンターとのわずかな隙間がお客との接点。そのホテルは隠れラブホで、ホテルに入ってくるのは親子と見間違うほどの年が離れたカップル。叔母海希江(鶴田真由)の知り合いの西洋画研究者(大竹直)は、研究熱心な真面目な雰囲気。でも妻子がありながら女子大生辰子(杉野希妃)に「2人だけで休憩しよう」と誘う男、そして海希江とも恋人同士らしい。そして兎吉と海希江は元恋人同士で、朔子が怪しむ秘密の時間を共有している。孝史は震災の被害者でクラスメートの女子と恋へと発展するかと思いきや、反原発活動に巻き込まれてゆく。こんなのんびり空間とドロドロ空間が交差する中で朔子の安らぎや成長があったのかは、なかなか伝わってはこなかったですね。朔子=二階堂ふみさんの表情が現われないマイペースな雰囲気がそう感じさせているのかな。

【予告編】 【オフィシャルサイト】

2014年公開作品。125分。和エンタテイメント配給。
・出演:二階堂ふみ、鶴田真由、太賀、古舘寛治、杉野希妃、大竹直、渡辺真起子
・監督:深田晃司
・脚本:深田晃司
・音楽:Jo Keita

青天の霹靂



 場末のマジックバーで働く売れないマジシャン春夫(大泉洋)は、生まれ育った環境を恨みながら人生を諦めていた。ある日、警察から行方不明だった父が亡くなったと連絡がくる。父はホームレスとなり孤独の中で死んでいた。春夫は、父が住んでいた鉄橋の下の小屋で、幼い自分と父が写った写真を見つけ手に取ると、突然の晴天の中、雷が直撃し、気が付くとそこは40年前の世界であった。

 タイムリープもので、40年前に飛ばされた男が、おのれの恨んでいた出生の真実を知り人生を見つめ直すものがたりです。

 雷に打たれた春夫が目を覚ますと、鉄橋の土台がコンクリートからレンガに変わり、町行く車は古いデザイン。路地に入ると洗濯のタライが家屋の壁に掛けられ、雨傘が開いたままで塀に引っ掛けて干してある。慌てて路地を駆け抜けると、そこはバスが停留するロータリーで、賑わう個人商店に、赤いポスト、コカコーラの瓶の自動販売機、そして多くの騒がしく移動する人々。少しこじんまりとはしていますが、昭和40年代らしき風景が映し出されています。やっぱりタイムリープものは、飛ばされた先の第一印象が大事ですね。そして飛ばされ途方に暮れる春夫が、自分を落ち着かせようと飲むのが三角牛乳。もちろん買うときには最初に500円玉を出す時代ボケも忘れていません。そして偶然か必然か辿り着いたのが浅草雷門ホール。そこで売れないマジシャンでも、ひょいとスプーン1本をくにゃり、ぐるり、ポロリと披露すれば、ユリゲラー来日前ですから大センセーショナルです。でも浅草は芸だけでは成り立たず、お笑いが必要なため、春夫のキャラ設定は謎のインド人「ペペ」。出で立ちはターバンらしき帽子に上半身裸にベストと、どこかで見たことがあるような・・。そして助手は中国人設定ですからチャイナドレス。カタコト日本語流暢に操り(?)繰り広げられるスプーン曲げの妙技にお客は拍手喝采です。この最初の助手がまさかの母親で、次の助手謎の中国人「チン」がまさかの父親。そう絡ませますか。でもでも、芸達者な「ペペ」大泉洋さんと「チン」劇団ひとりさんのコンビですから。漫才マジックが本当に面白いです。ネタはそれほど多く披露してくれませんが、息の合ったトークと息のあったケンカは絶妙ですね。そして「チン」の恋人悦子=春夫の母親は、柴咲コウさん。ものがたりを暗示させるかのような薄幸そうな雰囲気を持ちつつも、子供を授かって幸せいっぱいな女性を演じています。桜の中でふくらんだお腹をさする姿などまさに母。春夫が感慨深く見つめ、自分の人生だけでなく両親の人生も変えてみようと決意するのは当然の流れです。そして、春夫が今まで会ったことのなかった母親とふれあい、聞かされていた母親像が崩れてゆき荒んだ心に変化をもたらせますが、春夫が知っている両親の姿とは異なる展開へと進みます。そして、春夫が未来を予知できると信じて、私はどんな母親なんだろう?と尋ね、今までの人生の辛い思いと、ひとときを過ごした思いが交差して、春夫から出た言葉が「生きる理由」。
 話し的にはベタなのですが、昭和40年代という背景をうまく使い、劇団ひとり監督が描く人物像が俳優さんたちの素晴らしい演技で活かされ良い作品となっています。

【予告編】

2014年作品。
・出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり、風間杜夫
・監督:劇団ひとり
・音楽:佐藤直紀
・主題歌:「放たれる」Me.Children

<浅草雷門ホール>
舞台の浅草雷門ホールは信州上田の上田演劇に作られたそうです。



花とアリス殺人事件



 親の離婚で転校して来た中学3年の有栖川徹子(蒼井優)は、床に魔方陣のような結界が書かれた埃をかぶった教室の真ん中の席に座ることになる。クラスメートは奇妙な視線を浴びせるだけで決して話しかけてこない。ある日、昔、同じバレエ教室の通っていたふーちゃんが話しかけてきて、一年前にあの教室でユダがユダの四人の花嫁の一人に毒殺されたという噂を聞く。そして、そのユダの席は、徹子が今座っている席であった。そして、徹子は真実を知るために、そのクラスの一人であった隣の家の引きこもりの花(鈴木杏)を尋ねる。

 「アリス」蒼井優さんと「花」鈴木杏さんが一人の記憶喪失の少年との青春劇を繰り広げ、蒼井優さんの制服でのバレエシーンが印象的な「花とアリス」の前日譚アニメです。「殺人事件」という重々しいタイトルが付いていますが、中学生のユダがユダの四人の花嫁の一人から毒殺されたという学校都市伝説のような噂を、たまたまたま転校してきてユダの席に座り、たまたまユダが住んでいた家に引っ越してきて、たまたまユダの部屋で生活するようになった(偶然重なりすぎだろ)徹子が真実を知ろうとする物語です。でも決して高尚な目的ではなく、ただ気持ち悪いから、知ってる人に聞ければいいやぐらいの感じ。その知っている人とは、隣の花やしきが呼ばれている家の引きこもり少女「花」。この2人の出会いが、あの映画にも続くものがたりの扉を開けてくれます。

 この作品のサプライズは、「花とアリス」の出演者が、そのまま声優。岩井俊二監督ファンとしては嬉しすぎるキャスティングです。「アリス」は蒼井優さん、「花」は鈴木杏さん、「アリスの母」は相田翔子さん、「アリスの父」は平泉成さん、「花の母」はキムラ緑子さん、「バレエの先生」は木村多江さん、そしてこの映画では登場しないけれど記憶喪失になった少年郭智博さんも理科の先生役で登場。な、なんと豪華な。
さらにあの心に残る音楽もそのまま流れてくるなんて、なんてファン泣かせな。なにげなく流れる曲が、新たなシーンに結びつき、また心に残ってしまいます。アリスが久々に会った父が乗るタクシーを追いかけ追いつき、そのあと別れてまた少しずつ走り出してゆくシーンなど印象的で、このちょっとシーンでも、離れて住む父との関係を感じてしまいます。こんな何気ないシーンがさり気なく挿し込まれているのも岩井俊二監督らしい。

 ものがたりは、ユダの謎を更に膨らませるクラスの魔界の儀式や噂を盛り込みながら、アリスと花がユダの死を探りながら打ち解けて「花とアリス」へと繋がる関係を築いてゆく様子が描かれ、その絆を感じさせるのは、やっぱりラストシーンです。

【オフィシャルサイト】【予告編】
2015年公開作品。
・声優:蒼井優、鈴木杏、平泉成、相田翔子、木村多江、勝地涼、黒木華、鈴木蘭々、郭智博、キムラ緑子
・原作・脚本・監督・音楽:岩井俊二


麦子さんと



 兄の憲男(松田龍平)と二人暮らしの麦子(堀北真希)の所に、自分達を捨てた母(余貴美子)が一緒に住もうと尋ねてくる。頑なに拒む2人であったが、実は仕送りをしてもらっていることを知り、仕方なく同居することになるが、兄がさっさと家を出て麦子と母の2人だけの暮らしとなってしまう。しかし突然母は病で亡くなる。麦子は納骨するために母の郷里を訪れるが、町の人々は麦子の顔を見ると誰もが固まったかのように驚き、その姿に麦子は戸惑ってしまう。そして、かつて母が過ごしたこの町での母の夢見る姿を知ることになる。

 幼い頃に母が家を出て、母の顔も温もりも愛情も知らずに育った麦子。自分の夢が見つけられずに、何かにひととき熱中するが直ぐに冷めてしまう麦子。今は声優を夢見てアニメショップで働く日々を過ごす。そんな麦子の元に、かつて母であった「あのひと」が尋ねてくる。兄は「ばばあ」呼ばわりして、その女性を追い返そうとするが、何故か一緒に生活することになってしまう。「あのひと」は、へらへらしていて無頓着で、全く麦子が思う母親とは別の存在で、麦子は日に日に苛立ちを感じ、きつい言葉を浴びせてしまう。母親を知らずに育って接し方も甘え方も分からず距離を取らざるを得ない麦子。こんな麦子が、幼くてまったく母との想い出が無かった人生に、ほんの僅かだけ母との接点ができ、母の若かりし頃の情景を伝えてくれる郷里の人々と出会い、母の存在を素直に感じられるようになる物語です。

 兄と二人暮らしをしていても食事はコンビニ弁当、家ではアニメを見て、長続きしない夢を追っている麦子。どこか心に影を持った雰囲気を醸し笑顔も控え目。そんな女性像を堀北真希さんが演じています。暗さはあるけど端整な顔立ちと女性らしい身なりが可愛いですが、怖そうです・・。そして「あのひと」を演じるのは余貴美子さん、へらへらして自分の世界を生きているかのようですが、最後に会わずにはいられなかった子供への愛情と苦悩が所々に垣間見られます。麦子の兄を演じるのは松田龍平さん。母であった人を「ばばあ」と呼び、のそっといい加減な雰囲気。母が亡くなったときも、ざまーないよな、なんて軽口をたたいていますが、遺骨になった母を見ると・・。そして母の郷里で、夢溢れていた若かりし頃の母を知り、語り部となってくれる人々に、タクシー運転手で元ストーカーの温水洋一さん、バツイチで別れた自分の子供に会おうとしない霊園事務員ミチルに麻生裕未さん、麦子が泊まる民宿の夫婦にガタルカナ・タカさんとふせえりさん。彼らが語る母の姿と彼らとのひとときが、麦子の心の成長を閉ざしていた何かに少し光を与えてくれます。決して映画としては、盛り上がりはそれほど無いのですが、なんとなく麦子を見守ってしまいたくなる映画でした。

映画のシーンには「赤いスイートピー」が流れ、てっきり堀北真希版が聞けるかと思いましたが、アレ、歌わないのか~。でしたね。代わりにアニメ声優堀北真希が見れました。

【予告編】

2013年作品。95分。ファントム・フィルム配給。
・出演;堀北真希、余貴美子、松田龍平、温水洋一、麻生裕未
・監督:吉田恵輔
・音楽:遠藤浩二
・脚本:吉田恵輔、仁志原了
・撮影:志田貴之
・挿入曲:「赤いスイートピー」松田聖子



MONSTERZ モンスターズ



 視界に入る人間を操ることができる男(藤原竜也)は、その忌まわしい能力を利用して人知れず生きてきた。ある日、操れない人間田中終一(山田孝之)に偶然出くわすが、男の目の前で終一は車にはねられてしまう。しかし数日後、男は元の体に戻っている終一を見かけ、自分の世界から消し去ることを決める。

 自分の視界に入る人間を意のままに操れる能力。しかしその能力を使うことで体を黒い闇が蝕み失われてゆく恐怖とバケモノと罵られ家族も友もいない孤独な人生を歩む男。一方、常人であれば死に至る怪我を異常なまでの回復力で治癒してしまう男“終一”。この2人が、偶然か、必然か出会ってしまったことから、人知れずかつ大胆に隠れ暮らしていた男を表舞台にあがらせ、関係のない人々をも巻き込む壮絶な戦いが始まります。もちろん操る男の方が周りの人々を襲撃者として、そして武器として消耗品のように自由に使えて有利ですが、そこはハンデを背負わせ行動に制限を持たせることで、絶対者でないという設定が戦いを面白くさせています。とはいえ、襲撃者に選ぶのは屈強な男たちだけでなく、普通の市井の人々、そして終一の知人たち。そしてごくごく普通の人々に死を与えることで、終一の精神にもダメージを与える手段を選ばない冷徹さ。この操る男を藤原竜也さんが演じ、冷徹で自己的な狂気の裏に悲壮感を漂わせた男が、やはりよく似合う。いつもの藤原竜也がここにいます。そして、この男のターゲットとなり戦いに挑む終一を演じるのは山田孝之さん。こちらも人の良さの中にも地図マニアというオタクの雰囲気と屈強な精神を持ったタフな男がいます。この2人が正面からぶつかり合うのですから面白くないわけがない。次から次へと手を変え品を変え、終一を仕留めようと攻撃を仕掛けてくる男。そして始末したと安堵したところに、ひょっこり現われてくる終一。「なんで生きている」「お前は誰だ」「お前こそ誰だ」と、なかば掛け合い漫才に似た展開に・・。どうも途中から人間臭くなって、似たもの同士、友情が芽生えてしまった?などと思わせる感じでもありますが、最後までバトルは続きます。そしてこの2人の戦いに巻き込まれる人々で、ただ単に2人だけの戦いだけではなく、ものがたりに広がりを見せています。終一を車ではねたことで、逆に親密になってゆくギターショップの父娘(田口トモロヲさんと石原さとみさん)。終一のバイト仲間で少し変わった面を待つが、終一を守ろうとする友人たち(太賀さんと落合モトキさん)。子供の頃の終一を知り、事件の真相に近づく刑事(松重豊さん)。哀しき怪物を生んでしまった母親(薄幸女優の木村多江さん)などなど。そして映画の主題ともなっているモンスター能力合戦。男が、ホテルの窓から隣のビルを眺め、かっと目を見開き、青い視線を向けると、仕事中の人たちがシンクロして一斉に窓際に歩きだし、やがて両手で自分の顔を掴み捻り曲げようとする。こんな怖いシーンもまるで自分も操られたかのように目が離せなくなります。かたや終一もちょっと不用意に道路に出てバシャッ。横になっている上空からまさかの重量物でグシャッ。などと、こちらも痛、と感じてしまうシーンの数々。結局、この2人の能力は相容れないものなのか、それとも会うべき宿命だったのかは、ラストで・・。

【予告編】

2014年作品。112分。ワーナー・ブラザーズ配給。
・監督:中田秀夫
・出演:藤原竜也、山田孝之、石原さとみ、田口トモロヲ、落合モトキ、太賀、藤井美菜、松重豊、木村多江
・音楽:川井憲次
・原案:「超能力者」(韓国映画)

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映画大好き人間でやんす。日本映画好きでやんす。新旧問わず好きでやんす。
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