ルート225



 14歳のエリ子(多部未華子)は、なかなか帰宅しない弟ダイゴを探し行くように母から言われ、嫌々学校への道を戻り、公園でブランコに乗る弟を見つける。弟を連れ見知った道を家へと向かうが、ある曲がり角を曲がると、そこは、あるはずのない海岸であった。2人は慌ててもう一度公園に戻り家へと向かうが、途中でダイゴが少女に声を掛けられる。しかしダイゴは怯えたように後ずさりして姉の手を取り走り出してしまう。その少女は数年前に亡くなっていた。逃げるように家へ戻った二人がリビングの扉を開けると、温かいシチューだけが残され両親の姿はなかった。翌日2人は未だ帰らない両親に不安を覚え、いつもとどこか微妙にズレが生じていることを知り、パラレルワールドに紛れ込んでしまったのではないかと考え始める。

 パラレルワールド(並行世界)映画です。でも複雑なパラレルワールドではなく、その時空やストーリーはシンプルな作品です。話しは、帰宅しない弟を探しに行って連れて帰る途中でパラレルワールドへ迷い込んでしまうシンプルさ。何か、きっかけや予兆があるわけでもなく、突然、住宅街の家の角を曲がると、都内なのに海岸が出現(ここだけですねSFXは)。そして帰路途中での数年前に亡くなった少女との出会いで、まさにパラレルワールドへ。あとは、ほとんど元の世界と同じで、僅かにズレが生じている程度。でも、一番大きい違いは両親が家にいないこと。さっきまで夕飯を作っていた母親が、温かいシチューを残して神隠しのように消えている。これで舞台はできました。さらに、元の世界との繋がりを僅かに残し希望を与える。その繋がりは、ジャイアンツ高橋由伸選手(現監督)のテレフォンカード。それも打撃写真ではなく顔アップ写真(こんなのあるのか)。これだけが、元の世界の母と話しができる唯一のアイテムだけど、残り70円分のため、母の声を聞くのが精一杯で説明もできずに度数がカウントダウンされるだけ。さらに、迷い込んだときに、いつもと違うのは、弟ダイゴの、背中に「ダイオキンシン8倍!」とマジックで書かれたワイシャツ(ダイゴは捨てちゃいますが)、あとはルート225(国道225線)を跨いだこと(あれ都内設定のはずだけど実際の国道225線は鹿児島ですね)、姉が使えないピンクのビニール傘を持っていたこと、商店街のたこ焼き屋の前で焼き中のたこやきを覗き込んでいたこと、途中でエリ子の友人マッチョに会ったこと、などなど必要アイテムかと思わせるシーンを見ている側に印象づけます。もちろん姉弟たちも、そのアイテムの思いだしだし、元の世界へ戻る作戦をトライしますが・・。

 姉エリ子には多部未華子さん。少女らしさや可憐さとは程遠い、いつも面倒くさそうな女子中学生で、男言葉で口も悪い。笑みよりは、しかめ面や睨み顔が常。着ているのはドクロのTシャツ。素ではないかと思うくらい多部さん、エリ子になってます。この姉ちゃんに、幼さが残る中一ダイゴ(岩田力さん)が、姉にいじられ、不安でビビリながらも、姉を頼りにしてしまいます(実際は姉が弟を頼りにしていますが)。他にあまり登場シーンは少ないですが、姉弟の母を石田えりさん、父を嶋田久作さん、伯父を崔洋一監督が演じています。

 そして、なかなか戻れないエリ子が、異世界の写真を撮ると、そこに映し出されていたのは・・。なんて、SFぽいシーンが挟まれ、別の世界にいても家族の繋がりを求めるエリ子とある思いを決意するエリ子の成長が、描かれています。ラストは、こう来ましたかの展開。まあ、これもありかな。ここだけは現実っぽいですね。でもこのシーンで多部さんの笑みが見ることができました。

【予告編】

2006年公開。101分。
・出演:多部未華子、岩田力、岩原祐太、石田えり、嶋田久作、崔洋一
・監督:中村義洋
・音楽:江藤直子
・原作:「ルート225」藤野千夜

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そのときは彼によろしく



 アクアブランツ店「トラッシュ」を営む遠山智史(山田孝之)の前に、スタイルの良い女性が現われバイトを懇願して勝手に店に住み着いてしまう。智史は気が付かなかったが、実は彼女は有名なモデルの森川鈴音で、さらに智史の幼馴染の花梨(長澤まさみ)であった。やがて智史は、彼女が花梨であることに気付くが、もう一人の幼馴染佑司が事故で意識不明であることを知り、二人は佑司の元に向かう。そして花梨はそのまま佑司の所に残ることを智史に伝えるが、花梨には智史には明かせない秘密があった。

 雪のちらつく中、小さなアクアプランツ店「トラッシュ」の前のベンチに座る一人の女性。ふと視線を彼女に向ける智史が、視線を戻し店の中に入ろうとすると、すっと立って声を掛けるモデルのような容姿の女性。「ここあなたのお店?」、「わからない?私が探しているもの、わからない?」。そして見つめあう二人のアップとなり、少し微笑む彼女。でも「水草ですか?」「あっ、水槽?」と答える智史に、表情と態度が変わる彼女。このなにかあるのだろうな、な感じから入り、ところどころに意味ありげな素振りを見せる彼女とどうも的外れな智史の関係がなかなかいいです。見ている側は、小学生くらいの二人の男の子と一人女の子の回想シーンらしきものが現在と交互に挟まれるので関係は直ぐにわかりますが..。この小学生たちのシーンは、小さな池のほとりの森に隠れるように遺された古いバスとそこに住み着いた老犬。この少し異次元な空間で、バスの後部座席にぶかぶかのアーミー服を着て、ランドセルを枕に寝ている美しい顔をした少女を見つめる少年。気配を感じたのか突然目を覚まし目の前の見知らぬ少年に殴りかかるかのような勢いで「お前だれだ」と詰問する少女。その2人の間に割り込むように入るめがねの少年。これが深い絆で結ばれた3人の出会いとなり、この物語の本当のスタートでもあります。そして現実と回想シーンが交互に織り交ぜられ、智史と花梨が築いてきた信頼関係と決して恵まれた環境で育っていない花梨の今に繋がる心の癒しに智史とその家族が深く関わっていったことがよくわかります。やがて幼馴染の花梨と気付き「やっと分かったよ、君が探していたものを」と伝え、嬉しそうに楽しそうに花梨との時を過ごす智史。でもときどき暗い顔が見え隠れし、哀しそうに智史を遠くから見つめる花梨への不安が伝わってきます。そしてもう一人の幼馴染の祐司の消息が判明しますが、それは本人からの電話ではなく、佑司の彼女からの悲痛な電話。久々に出会う佑司は交通事故で意識不明状態。これもものがたりの伏線なのです。そして花梨の身にも、恐怖の眠りと夢の世界が訪れてしまいます。

 世間離れして、どこかおどおど、でも水草のことになると自然と弁が立つ。そんな智史を回りは好意を抱いてしまう。そんな人物像が普通に存在してしまう山田孝之さんの演技はいいです。そして有名モデルの森川鈴音こと智史の幼馴染花梨に長澤まさみさん。少し小悪魔的で明るい花梨と、時折見せるもの哀しそうな花梨の二面性が、やはりいいです。そして2人の人生に関わるのは、智史に好意を抱く真面目なパン屋さんに国仲涼子さん。優しさに溢れる智史の両親に小日向文世さんと和久井映見さん。智史と花梨の幼馴染佑司に塚本高史さん、その彼女に北川景子さんとなかなかの顔ぶれです。

 そして再び目を覚ますかわからない深い眠りにつく花梨とその目覚めを待つ智史。その時の流れの長さを感じさせる移り変わる様々な出来事が過ぎ去り、やがて何十年も目を出さずに眠るオニバスの種に変化が起こり、そして・・・。

【予告編1】【予告編2】

2007年公開。114分。
・出演:山田孝之、長澤まさみ、塚本高史、国仲涼子、小日向文世
・監督:平川雄一郎
・音楽:松谷卓
・原作:「そのときは彼によろしく」市川拓司
・主題歌:「プリズム」柴咲コウ




<市川拓司原作作品>
市川拓司さんの原作は日常生活の中にある不思議な世界が描かれ、映画化作品も全て好きです。
妻を亡くした親子の前に、雨の日に亡くなった妻が現われる「いま、会いにゆきます」(2004年:竹内結子、中村獅童)。コンプレックスを持つ二人の大学生のカメラを通じた淡く切ない恋物語「ただ、君を愛してる」(206年:宮崎あおい、玉木宏)。

サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS



 人が足を踏み入れない深い山の中に旅客機が墜落する。救助に向かった自衛隊は、瓦礫と化した飛行機であったものの中から、助けを求める子供の声を聞く。それは頭の中に直接届く声であった。

 「サトラレ」。おのずの心の中の声“思念”が周囲に放出される能力をもつ人。
「サトラレ」は別の優秀な特異の力を秘めているため、国家の財産とされ、本人には知らされずに、その生活の全てを国家が保護(監視)する。そんな世界の中、とある小さな町「奥美濃町」の病院で、外科医に成り立ての「サトラレ」里見健一が働いていた。そして健一を臨床医から成果の得やすい研究医に転向させるために、女性自衛官小松洋子が病院に派遣される。

 「サトラレ」を守る大袈裟な国家権力をユーモアに描き、守られる「サトラレ」の隠せない心を切なく描く物語です。国家権力を使っても守るのは、「サトラレ」健一の恋愛あきらめ作戦。これが仕事か~。多くの人が集まる花火大会で、健一が意中の女性に告白するのを阻止すべき、そこらじゅうに役人がスタンバって、諦めさせるためのシナリオを遂行。「踊る大走査線」の本広監督映画ならではの、小刻みにカットが切り替わるスピーディな展開と、ハプニングを織り交ぜ見せる映像で、これだけでも、一大イベントになってしまいます。
 そして、常に健一にサトラレないように健一が幼い頃から、同じ時を24時間警護しているSPの福利厚生(極度の緊張による披露回復休暇)を取らせるため、健一と洋子を思念が人々に届かない無人島に送り込んでしまう。ちょっと、ラブモードに入ってしまうのかなと思いきや、「サトラレ」に関係するとんでもない展開が用意されていて、「サトラレ」の周りには平穏無事がないこと、「サトラレ」自身が持つ消えることのない恐怖がうかがえるものとなっています。

 「サトラレ」健一に安藤政信さん。「キッズ・リターン」でも登場した線の細い柔な男がここにも存在し、その繊細の役柄がぴったり。女性自衛官に鈴木京香さん、テキパキしていて自衛官の制服姿がよく似合います(戦国自衛隊1549でも見せてくれましたね)。ところどころに年齢を気にする自虐的シーンがユーモアで、乙心がときおりちらりちらりと「サトラレ」のように垣間見れるところが、かわいい。

 「サトラレ」という自分だけが知らずに、周囲がやきもきしながらも、煙たがっていた「サトラレ」だけにしかできない、偽りのない気持ちを伝えるという行動が、本当の優しさと癒しだと気付かせてくれました。普通の邪念多きの人間には無理ですけどね・・。これも「サトラレ」ならではなのかな。


2001年作品。130分。
・出演:安藤政信、鈴木京香、内山理名、松重豊、小木茂光、八千草薫、寺尾聰、小野武彦
・監督:本広克行
・音楽:渡辺俊幸
・主題曲:「LOST CHILD」 藤原ひろし+大沢伸一 feat.クリスタル・ケイ
・原作:「サトラレ」 佐藤マコト




きまぐれロボット



 作家のエヌ氏は生活の全てを母頼みにしていたが、その母が急死してしまい途方にくれてしまう。そんなある日、チラシで見かけたジローというロボットを購入する。最初のうちは、黙々と忠実に従うロボットを気に入っていたが、やがてロボットの動作が怪しくなり、人間のようにきまぐれに行動するようになる。

 「ショートショートの神様」星新一氏原作作品で、モノクロ映像で描かれるその淡々とした雰囲気がまさに星ワールド。登場する古めかしい昭和感いっぱいのチープなロボットも、星作品の本の表紙でどこか見たことがあるよう感じで、言葉は理解できるが話すことはできず、口からダダダダダッとドット文字を印字して返事をするつくり。でもガチャンガチャンと変身して空を飛ぶことができるというローテクなんだかハイテクなんだかわからない不可思議仕様。まどろっこしい。登場人物も(たった四人ですが)、日常とはどこか違う無機質感と違和感。日常生活が一人では満足に出来ない作家エヌ氏(浅野忠信)は、自分では何一つ出来ないのに注文と文句が多く、アイデア出しのきっかけも妙にヘン。そして、エヌ氏の生活全てを支える母(夏木マリ)はというと、登場シーンからヘンで、微笑したまま身動きせず一言も発しないでフリーズしているロボット状態(理由がありますが)。ロボット開発の所長(逢坂じゅん)も、きまぐれに動くロボットへのクレームに意味深に答えるのみで、どこか怪しい。そしてロボットの修理にやってくる助手(香里奈)は、とにかくぶっきらぼう、でも時おり見せるその笑顔の真意は・・。映画としては、このストーリーと登場人物ですから、盛り上がりとかは求めてはいけません。星ワールドのあっさりとしたオチを待ちましょう。あっ! やっぱり驚きより、あっさりでした。

2007年作品。
・出演:浅野忠信、香里奈、逢坂じゅん、夏木マリ
・監督:辻川幸一朗
・音楽:小山田圭吾
・原作:「きまぐれロボット」 星新一

阿修羅のごとく



 独立した竹沢家の四姉妹は、老いた父に浮気と隠し子の疑いをもち、母に知られぬよう解決しようと集まるが、彼女達にもそれぞれの秘密と悩みを抱えていた。

 タイトルの「阿修羅のごとく」。そして「阿修羅」の説明から始まる映画に、任侠もの?ハードボイルものと勘違いしてしまいますが、実は父の浮気騒動から始まる四姉妹のホームコメディタッチのものがたりです。父の浮気と隠し子騒動はもちろん一家の一大事で、父に悟られず、母に気付かれずに行動する四姉妹と取り巻く人々のあたふたぶりが描かれ、さらに彼女たち自身の深刻でいながらもユニークなってしまうエピソードも並行して描かれる構成となっています。

 この登場人物と演じる俳優さたちがいい味を出しています。夫に先立たれ花を教えて生計をたてる長女綱子に大竹しのぶさん。一見長女らしいしっかりものと思いきや自由奔放で、父の浮気を知りながらも自分も不倫中。次女巻子はサラリーマンの夫をもつ平凡な妻、黒木瞳さん、家族のために尽くすよき妻ですが、夫に女性の影か見え始め、ダメだと頭では分かっていても体が別な行動をしてしまう一面をもちます。三女滝子は男性とは無縁な真面目な図書館司書の深津絵里さん。シンプルな服装でメガネ姿がいかにも素朴で一番の心配性。でもそんな彼女にも気になる男性が登場。四女咲子は女好きの無名ボクサーと同棲して、彼に新人王を取らせようと本人以上に一生懸命になる。そして彼女たちを取り巻く人たちがまたいい。彼女達の父に仲代達矢さん。真面目な風貌と娘を思う気遣いから、本当に浮気をしているのと疑いたくなりグレーのまま物語は進みます。が、途中から子供にパパを呼ばれて・・・。次女の夫で竹沢家の中心的人物に小林薫さん。どうも父の味方をすると思いきや自らも・・・。その相手らしき秘書に木村佳乃さん。妖艶で何かを秘めいた仕草。父の浮気を調査する興信所の青年に中村獅童さんで、ほとんど喋り方がウド鈴木。長女綱子の浮気相手は坂東三津五郎さんで、その妻は桃井かおりさん。夫の浮気を知り拳銃を綱子に向け・・・。そして、彼女たちが一番気に欠ける母に、まさに良妻賢母の八千草薫さん。なにも文句を言わず、心配事は夫の高血圧。のはずが、まさか彼女にも秘密があったとは。

と、この愉快な人物像だけでも楽しい。やっぱり森田芳光監督作品とあって、ひとりひとりにスポットを当てて、すべてが融合してひとつの物語を紡いでゆく演出は流石ですね。残念ながら数年前に亡くなられたので、もう新作は見られませんが、懐かしの作品をまた観たくなりました。「の・ようなもの」、「家族ゲーム」、「(ハル)」・・。

【予告編】

2003年作品。135分。
・出演:大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、仲代達矢、八千草薫、小林薫、中村獅童
・監督:森田芳光
・音楽:大島みちる
・原作:「阿修羅のごとく」向田邦子
・主題歌:「ラジオのように」ブリジット・ファンテーヌ





<4姉妹の作品>
谷崎潤一郎原作の「細雪」(‘83)。長女:岸恵子、次女:佐久間良子、三女:吉永小百合、四女:古手川祐子。赤川次郎原作の「三姉妹探偵団」とお菓子のCMがコラボした「四姉妹物語」(‘95)。長女:清水美砂、次女:牧瀬里穂、三女:中江有里、四女:今村雅美。今年の公開予定の吉田秋生コミック原作の「海街diary」。長女:綾瀬はるか、次女:長澤まさみ、三女:夏帆、四女:広瀬すず。いつの時代の映画でも美女揃いですね。

 


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映画大好き人間でやんす。日本映画好きでやんす。新旧問わず好きでやんす。
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